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須貝絵玖という女の子(9)

「…………」


 ――いつも通りかわいらしい笑顔を見せた後、手を振って家に向かう絵玖。


 一見いつもの光景に見えるが、今日はそれがいつもの絵玖には見えなかった。もちろん、さっきの咳き込みを聞いたせいだろう。本人はよくあることと言っていたけど、あんな息が止まりそうな咳き込みが頻繁にあったら、体が保つとは思えにくい。


 正直、帰り道は普通を装うのにかなり苦労した。普段は何気なく絵玖を家まで送っていたけど、今日に限っては何としても送ってやりたいと思った。途中で倒れたりした場合、誰も側にいなかったら救えるものも救えなくなってしまう気がしたから。


 変に考えない方がいいのだとは思うが、どうしても思考を止めることができない。


……俺は、さっき絵玖が女子トイレで本当は何をしていたのか、一つ思い浮かんでしまったことがある。


絵玖は、トイレで吐き気がしたと言っていたが……本当は違うものを吐いていたんじゃないかと。


その違うものっていうのは、さっき絵玖のおでこの体温を計った時、絵玖の甘い体臭の中に微かに感じた鉄のような臭い……そう、血を吐いていたんじゃないかと。


 もちろん、絵玖の言っていたことが本当であればそれに越したことはない。まあそれでも頻繁に吐き気を催すのも良いわけではないが……でも、血よりはマシなはず。ただ、この言い知れぬ不安を拭い去れないのは……。


 以前、医学のテレビを見た時、そういった症状について取り上げているのを見たことがある。その時、VTRに映った男は、激しく咳き込みながら、赤黒い血をドバドバと口から吐き出していた。


その咳の仕方が……さっきの絵玖にかなり似ていたんだ。もしテレビと同じようなものであれば、早々治るようなものではないだろう。

 

――ひょっとしたら絵玖は、それが原因でこのド田舎に転校してきた?


 俺の考えすぎだとしたら、そうであってほしいが……ただただ、心配だ。


 …………。


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