須貝絵玖という女の子(8)
「――絵玖、大丈夫か?」
もう少ししたら――そう言ってから5分程経つが、まだ絵玖はやってこない。
「倒れたり、してないよな?」
もしそうだとしたら、只事じゃあ済まないぞ。……先生を呼ばなくていいと言ってたが、やっぱり心配だ。
「呼びに行こう。……絵玖はああ言ってたけど、やっぱり――」
「――どこ行くんですか? 秀吾くん。あたしを置いて、帰ろうとしてるんですか?」
「うおおおっ!?」
突然聞こえたバックボイスについ驚きの声を上げてしまう。そして振り返る。
「ああ、え、絵玖……戻ったのか」
「はい、もう良くなったんで」
「大丈夫なのか? 気持ち悪くないか? 熱もないのか? ちょっとおでこ出せ。熱計る」
「だ、大丈夫ですよ。そんな心配してくれなくても」
「いーや、しないと俺の気が済まない。頼むから、おでこ出してくれよ」
「わ、分かりました……」
俺は自分のおでこと絵玖のおでこをくっつけ、体温を計った。普通なら俺とは思えない大胆な行動と自分で驚くが、今はそんなこと言ってる状況ではない。
「……………………うん、熱はないみたいだな」
「だから言ったでしょう? 良くなりましたって」
「なら、いいんだが……はぁ~……」
「心配かけたみたいで、ごめんなさい」
「いいんだ、大丈夫になったんならそれで……たまにあるのか? ああいうの」
「そう、ですね。あたし、生まれつき胃が強くないので、時々ああいうのが起こっちゃうんです。もう昔からなんで、慣れちゃいましたけどね」
「そういうのに慣れたくはないものだけどな……」
「仕方ないことですね。でも、少し経てばこの通り元気になるので、そこまで生活に支障は来さないですよ。だから、秀吾くんも元気出してください。さっきからしかめ面のままです」
「直そうとは思うんだが、顔の筋肉が言うことを聞かなくてな……」
「うーん、どうしたら直ってくれますか?」
「いや、今直す。気合いで何とかする……………………どうだ?」
「あはは、さっきより良くなりましたよ。じゃあ、帰りましょう。食材が新鮮なうちに届けてあげないと」
絵玖がそう言ってエビとサワガニの入った袋をポンポンと触った。
「そうだな。鮮度が落ちたら美味しさが半減しちまうしな」
「はい」
「いつも送ってくれて本当にありがとうございます」
「いいってことよ。これも男の特権じゃないか。俺が送ることで、絵玖との仲も育まれより良い関係に近づいていくってものよ」
「あはは、秀吾くんは考え方がすごく論理的ますね」
「実際、頭が良いからな。違和感はないはずだが」
「そうですね、全然普通に聞こえます。あたしが言ってもその雰囲気は出せそうにありません」
「絵玖はかわいい雰囲気を保ってればそれでいいだろ。これで頭まで良かったら、俺の居場所がなくなってしまうぜ」
「あはは、おバカさんでいる許可が出ました」
「うむ、人並みを保っていればいい。……じゃあ、またな。暇な時、メールでも遊びにでも来ていいからよ。土日は基本家にいるはずだから」
「はい、分かりました。今日も楽しかったです。じゃあ……またね」
…………。




