須貝絵玖という女の子(4)
「…………あっ! 秀吾くん、小っちゃいけど、一匹だけいました」
「お、ホントか?」
「はい。これ、そうですよね?」
絵玖が網の下の部分を指差す。
「おお、そうだな。やったじゃないか、一度目で収穫するとは、なかなかセンスがあるじゃないか」
「あはは、それ程でも」
「じゃあもう、要領は分かったな? 再レクチャーしなくても平気だな?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、ここからは二手に別れよう。俺は向こう側の水草から見ていくから、絵玖はあっちの水草からやっていってくれ。そしたら、中間点で落ち合うことができる。何かあったら俺にサインを送ってくれ。ヘルプに向かうからよ。OK?」
「OK、です」
「じゃあ、いっちょやるか。……エビ、サワガニ捕獲作戦、開始だ」
「おー!」
――二手に別れた後は、地道な作業が続く。
「…………」
ゲシゲシ。
「……よし、二匹ゲット」
ちょっとずつポイントをずれながら、同じ工程を繰り返す。
どうやらこのポイントは、正解だったようだ。水草を縄張りにしてるエビたちが多いようで、蹴る度に一匹は最低出てくるような感じだ。多い所では一回で五匹出てきたりとなかなかの収穫ができそうだ。
もちろんエビだけでなく、時々出てくるサワガニも収穫する。サワガニに関しては上手く捕まえるコツがないため、笊に上手いこと誘導して捕らえることしかできないからエビよりもちょっと苦戦を強いられる。でも、川辺に住むにしては、そこそこビッグサイズのものに成長しているから、逃がすわけにはいかない。
出現率としては、エビ時々サワガニと言った感じだな。さっき英気を養った分、ノンストップで最後まで行くぞ。
……………………。
「よいっしょ……」
ゲシゲシ。
「入ってるかな~…………あ、いた。えへへ、またまたゲット~。すごいな~、この辺、たくさんエビが住んでるんだ~。亮くんの言ってた通りだね。バケツに入れてっと……こういうのも、結構楽しいね。……あ、さすが、秀吾くんは早いな~。もうあんなに進んでる、やっぱり地元の人は慣れてるんだね。……あたしも、負けないように頑張ろう!」
ゲシゲシ。
……………………。
――それから40分くらい経っただろうか。
「――よし、最後一匹ゲット、と」
「はぁ……はぁ……やっと、秀吾くんと落ち合えました」
「おう、よく頑張って続けたな。偉いぞ」
「それほどでも。だけど、結局秀吾くんが70%くらいやっちゃいましたね。全然中間で落ち合えなかったです」
「俺はガキの頃からやってるからさ。初めてでこれくらいできたなら上出来だって」
「ありがとうございます」
「で、どうだった? 成果は」
「はい。結構採れたと思います」
絵玖はそう言ってバケツを見せる。……なるほど、大体30匹くらいは入ってるようだ。
「秀吾くんは? 見るからに採ってそうでしたけど」
「そうだな。今日は結構採れたと思うぞ。――ほれ」
「うわぁ~、す、すごい」
さっき数えてみたが、エビが50匹くらいでサワガニが10匹くらいだったと思う。二人合わせると、ちょうど100匹くらい採れたことになるな。
やっぱりこのポイントは、エビやサワガニが育つのに適した環境だったんだろう。
「バケツの中がとんでもないことになってます」
「はは、まあ初めてみたら驚くわな。でも、以前亮とやった時はこれがバケツ二つ分くらいになったこともあったんだよ。その時は、自分で採っておいて正直気持ちが悪かったな」
「そうなんですか? さすが地元の人は腕が違いますね」
「ありがとよ。――何にしても、今晩の夕食分は確実に収穫できたな。二人ともグッジョブだった」
「これは、癖になりそうですね。すごく楽しかったです」
「だろ? でも、いつもこんな感じで採れるわけじゃないからな。一匹も採れない時もあるから、日によってマチマチだ。それだけは注意しておくように、もしこれからもやるとしたら」
「はい、頭に入れておきます」
「よし、じゃあ亮のところに戻るか。その後に、クラスで欲しい奴いたら分けてやろう。こんなにはさすがに食い切れないからな」
「そうですね」
――俺たちが水草のポイントを漁ってる間、亮もいくつかポイントを変えて探していたようで、エビ、サワガニ合わせて40匹程収穫していた。
三人合わせておよそ150匹くらい採ったことになる。
故に、俺たちは20匹くらいを自分用に取り分け、残りをクラスの欲しい奴に譲ることにした。
佑香、先生を含め5人程が少しずつもらい、余った20匹は川に返してあげた。無理して全てを受け取る必要もないからな。
午後は予め持参しておいた弁当を川辺で食べ、食べ終わったらまた、それぞれ自由に川を満喫する。
亮は無謀にも素手で川魚採取に挑戦、佑香は引き続き先生のお守り、俺と絵玖は水切りなどをして時間を過ごした。
始めこそ何処でもいいと言って決めた川辺だったが、終わってみれば川辺を選んで正解だったと言えるだろう。
最高気温が高いと言われていたようだったが、川辺のおかげで体感温度は高くならず、むしろ涼しいくらいに過ごすことができた。みんながみんな、楽しかったと口を揃えて言っていた。
……………………。




