須貝絵玖という女の子(2)
――そして、クラス全員で川にやってきた俺たち。
全員で来ただけで後はそれぞれの自由。この川の流れは穏やかだから、泳ぎたい奴は泳ぐし、足に水を浸すだけにしておく奴もいる。
後、亮みたいに川エビやサワガニなど食用の生物を採取しようとする奴もいるな。そう考えると、川辺でやれることは意外にも結構あるかもしれない。
「あはは~、冷たくて気持ちいい~」
先生は楽しそうに浅瀬で水をパシャパシャしている。浅瀬で遊んでる理由はもちろん――背丈があまりないからだろう。
「んふふ~、それ」
「つめたっ! ちょっと先生~、やめてくださいよ~」
「ふふ、悔しかったらかけ返してもいいよ~?」
「じゃあ、遠慮なく行きますよ?」
「かかってこぉい~!」
どうやら、先生のお守りは佑香がしてくれそうだ。
――あ、ちなみに今俺は、木の幹の下に寝転んでいるところ。ずっとこうしている気はなく、少し涼んだら、亮と同じように食料集めをする予定だ。上手くゲットすれば、今晩のおかずを買わずして手に入れられるからな。
「………………」
「……眠いんですか? 秀吾くん」
「おお、絵玖か」
さっきまで川辺で足を浸していたようだが、引き返してきたらしい。
「もう足浸しは終わりか?」
「いえ、そういうわけじゃないですけど、秀吾くんの姿が見えたので、ちょっと来てみました」
「そうか。別に自分のしたいことしてくれていいんだぞ? 俺は今エネルギー充填中だから」
「充填? 何か考えてるんですか?」
「亮と同じことをしようと思ってな。今の時期、この川には食材がうようよしてる。せっかく来たなら採らない手はない。そのための英気を養っているんだ」
「主に何が採れるんですか?」
「そうだな。結構いるぞ、川エビ、サワガニ、イワナにギル……アユなんかも採れると思うぞ。今日は釣竿がないから、狙いは川エビとサワガニだな。今の時期は脱皮がちょうど終わった頃だから新鮮なものが採れるはずだ」
「そうなんですね。何だか楽しそうです」
「せっかくなら一緒にやるか? ちょっとコツはあるが、分かれば絵玖にもできるだろう。崎田さんにお土産として持っていってもいいだろう」
「そうですね。……ちなみに、どんな料理に向いてますか?」
「そうだな。……この川は綺麗だから大丈夫かもしれないけど、念を押して生で食べるのは止めておいたほうがいいな。メジャーなのはやっぱり唐揚げかな。塩味も美味いけど、カレー塩とかで食ってもいけるぞ。後カニだったら味噌汁にしても美味いな。そこそこの出汁が出て良い味になる」
「なるほど。唐揚げとお味噌汁ですね……頑張って採りたいと思います」
「モチベーションが上がってきたようだな」
「はい。今晩の夕食はこの川の食材にしたいです」
「俺も同じ気持ちだ。まあないとは思うが、もし採れなかった場合、亮にかわいらしく『亮くん、分けてください』って言えば快く分けてくれると思うから、試してみな。下手したら採った分全部くれるぞ」
「あはは、分かりました。最終手段として採っておきます」
「じゃあ、もうちょっと休んだら行くか。行く時になったら呼ぶよ。もう一回、水辺で遊んで来なさい」
「秀吾くん、父さんみたいな良い方ですね」
「自分でもちょっと思った」
「じゃあ、行ってきまぁす」
絵玖はトットコ走って、川辺に向かって行った。そして、今度は浅瀬のほうに向かって歩いて行った。やっぱり都会にはこういうのがないから、楽しいんだろうな。
俺たちにとっては当たり前の光景でも、絵玖にとっては初めての光景。そういう感じたことのないものを感じれる時って、人間はワクワクするもんだ。
実際、絵玖はワクワクしてるようだった。声色もいつもより少し明るかったし。この村に順応できてるようで、本当に良かったと思う。
俺は川辺で楽しそうに足をぱちゃぱちゃさせて遊ぶ絵玖を何の気なしに見ていた。
…………あ、今日は水色だ。




