打倒佑香! 期末テスト奮闘記(9)
「ここだ」
「うわぁ……すごい眺めですね~」
目の前に見えるのは、この村の下にある街々の情景。少し夕日がかっていることもあり、背景まで綺麗に映っている。
「綺麗だろ? ここ、小さい頃村のおじいちゃんたちに教えてもらったところなんだ」
「そうなんですね、綺麗~」
絵玖は目を輝かせて風景に見入っている。どうやら気に入ってくれたようだ。
「結構驚くだろ? こんな高いところにこの村はあったのかって」
「はい。でも言われてみると、この村に来るまで登り坂が結構あったなって思います。そう考えたら、これくらいの高さになるのかなって納得もします」
「見て初めて分かる、この村の立地だな。……よっこいしょっと」
俺は芝生のところに腰を下ろした。絵玖もその隣に、女の子座りで腰を下ろす。
そうしたところで、俺はポケットにしまっていた駄菓子を取り出し、パクパクと食べる。
「ほれ、食え」
「あ、いただきます」
絵玖にも分けて、二人仲良く食べる。
時々吹く風が涼しいから、ここは居心地がすごく良い。
「ここなら、ずっと居られそうですね」
「だろ? 俺もガキの頃に同じことを思ってた。その帰り道、あの登り坂のところで転んで膝を擦りむいて泣いたんだけどな」
「それは、災難でしたね」
「それがあってからは、ガキの頃はちょっと怖くて行きあぐねてたんだが、成長して二桁年齢になった頃にはそれもなくなって、落ち着きたくなったら時々来るようになったんだ」
「そうですね。ここならすごく心が安らぎそうです」
「実際安らぐからな。絵玖も落ち着きたくなったら利用するといい。俺が許可を出すぞ。ただ、あんまり他の人には教えないようにな。佑香と亮以外は知らない場所だから」
「そうなんですね。じゃあ、ここは村人も分からない秘密のスポットなんですか?」
「この村のおじいちゃん、おばあちゃんは知ってるかもしれないけどな。同世代には、分からない奴が多いと思われる」
「そんなスポットをつい先日来たばかりのあたしが知っちゃったんですね」
「うむ。絵玖は村人よりも村人のような女の子になったわけだ」
「そ、それはないと思いますけど……でも、ちょっと得した気分です」
「はは、そう思ってくれるなら教えた甲斐もあるってもんだ」
「本当に、秀吾くんはこの村のことに詳しいんですね」
「生まれてからずっと住んでるんだ。そういう知識は勝手についていくもんだよ」
「でも、ここは村の人も知らないスポットなんでしょう? それを知ってるってことは、相当レベルの高い村人ってことじゃないですか?」
「そうか~?」
「はい。あたしの中で、秀吾くんはヴィレッジマスターの地位にいます」
「ヴィレッジマスターか。響きはすごく魅力的だ、日本語に直すと激しく魅力が下がるが」
「直さなければ、良いままですよ」
「じゃあ、絵玖の前ではヴィレッジマスターでいることにしよう。聞きたいことがあれば何でも聞くがよい」
「ありがとうございます、ヴィレッジマスター様」
うん、満更悪い気がしないな。
「…………」
ふと、横にいる絵玖の姿が目に止まった。




