打倒佑香! 期末テスト奮闘記(4)
7月24日
「――それじゃあ、これが終わったら荷物は一旦外に出して、机の上は筆記用具だけの状態にしてね。今日から三日間、精一杯頑張ってください。以上でーす」
ショートホームルームを終えたところで――。
「じゃあみんな。机の中の荷物とカバンを外に出しましょう」
今度は学年代表の佑香が、俺たちの指示を行う。
みんなそれぞれ、教科書、ノートを外に運び出し、それが終わった後は机をテスト用フォーメーションに切り替える。
いわゆるカンニング防止だな。まあこの少ない人数では、カンニングをする余地などないっちゃないんだが……まあ、形というのは大事だからこれも必要なことだろう。
ちなみに席は普段の席とは違い、出席番号順で座る。よって俺は一番だから教室の一番右端の一番前だ。そしてその左隣は、以前ならば高橋が座っていたんだが、名字的に今回は――。
「あ、秀吾くん」
「やっぱり、絵玖ってことになったか」
「やった、秀吾くんの隣でテストを受けれるんですね」
「喜ぶ程のことなのか? それは」
「はい。隣に見知った人がいたほうが、安心して受けられる気がしますから」
「見知ったも何も、ちょっと振り返れば見知った顔ばかりじゃないか」
「だって、テスト中にそれをしたらカンニング扱いでしょう? でも隣にいるのなら、それをする必要もなくなりますから」
「うーむ、なかなか珍しい考え方だな」
「とにかく、ちょっとラッキーです」
「絵玖が満足してるならそれに越したことはないか。……絵玖が行き詰った場合、そっと手を貸してやりたいところなんだが……今回ばかりはそれができないのが悔しいところだ」
「き、気持ちだけでいいんですよ? そんなことしたら、秀吾くんが大変なことになってしまいます」
「隣が知り合いでも助けてあげることができない……テストというのはなかなか残酷だな」
「自分の力量を試すためですから、頼ったら個人の実力が分かりませんからね」
「全力を発揮できるよう頑張るか。……3日後に、シャボンティ諸島で」
「……どこかで聞いたことあるような台詞ですね」
「許可も取らず大胆にパクッてみた」
「すごく、男らしいと思います」
「これを褒めてくれるか……絵玖は底なしに優しいの~」
「誰にでも優しいわけじゃないですからね? あたしは」
「……何やら意味深な一言だな。そういうこと言うと、勘違いしてしまう可能性があるぞ? いいのか?」
「ふふ、……そこは秀吾くんに任せますよ」
「……やはり魔性だ、須貝絵玖と言う女は」
「――はぁーい、お二人さん。しゃべってるところごめんね? 持ってないと思うけど、携帯の有無のチェックをさせてください」
「へいへい。ほら……俺は何も持ってなどいない」
「うむ、よろしい。絵玖ちゃんも、持ってない?」
「はい。何もないです」
「OK。――予習はバッチリ? 二人とも」
「できることは、やったと思います」
「おう。――毎度言ってることだが、今回も言わせてもらうぜ。――今回こそ、佑香を倒してみせる」
「じゃあ私も、毎度言ってることだけど言わせてもらうわ。――今回も、私が勝たせてもらうわ。負けないわよ」
「メラメラメラ……」
「メラメラメラ……」
「こ、効果音も自分でいれるんですね……」
「ああ、今のは今回初の試みだから。何となくやってみただけ」
「ちょっと、秀吾に乗せられちゃったわね~」
「あはは、息ピッタリですね。二人とも」
「とにかく、簡単には勝たせんからな。期待してろ」
「ふふ、じゃあ期待してるわよ」
佑香は後ろの席のチェックへと向かう。
「そういえば、今日は亮がやけに静かだな」
「そうですね」
一番左端の列の最後尾を見てみる。
「うう~……」
椅子にグッタリ座り込んで眠りかけていた。
一夜漬けを敢行した成れの果てだろう。静かなのも頷ける。




