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人見知りモード!・解除!(10)

「――ここなんて、悪くないんじゃないか?」

「わぁ~、綺麗……」


 俺は以前、絵玖に教えた川上に連れてきた。


「近くで見ると、より綺麗ですね」

「ここの川は汚染とかがほとんどされてないから実際にすごい綺麗だぞ。そのまま掬って飲んでも体に害は及ぼさないんだ」


「そうなんですか」


 俺たちはその辺の石に腰を下ろしてアイスを食べる。

 うん、今日もアイスが美味い。歩いたせいで体が火照っているから余計に美味しく感じる。


「はぁ、このために今日頑張ったようなもんだな~」

「秀吾くん、ビールとか飲んだお父さんみたいな発言ですね」


「自分でもそう思った。でも、意味合いは間違ってないから撤回はしないぞ」

「あははは……あむ、美味しい。……あたし、学校が終わった後に買い食いなんてしたの、初めてだったんですよ」


「やっぱり、以前の学校はそういうの厳しかったのか?」

「そうですね。あたしが通ってた学校は、結構特殊な学校だったので、そういうのが見つかると、何かとうるさく言われがちだったんです。まあ、どの学校でもそういうことは厳しいのかもしれませんけど」


「でも、そうだろうな。絵玖は元アイドルなわけだし……どうだ? 買い食いをしてみた感想は」

「何だか、とってもワクワクしますね。悪い気分は全くしないです」


「癖になりそうか?」

「そうですね」


「買い食いといっても、アイスくらいしかないんだけどな。それか、亮の家とかでトマト食わせてもらったりとか」

「でも、コンビニのパンとかよりもすごく魅力的に感じますよ、あたし」


「なら、今度亮に頼んでみな。多分喜んでトマト分けてくれると思うぞ。夏が旬だから、今を逃すとしばらく食べれないかもしれないし」

「そうですね、今度頼んでみます」


「……話全く変わるんだけどもいいか?」

「はい、何でしょう?」


「さっき、俺がお前を待ってる間、何処に行ってたんだ? 誰かと話でもしてたのか?」

「ああ、はいそうです。ちょっと成木先生とお話をしてました」


「何の話だった、とか聞いても大丈夫か?」

「全然いいですよ。大したことじゃないんです、こっちの学校生活には慣れた? とか、不自由じゃない? とか……軽い面談みたいなものをしてました。言っても都会育ちでしたから、先生なりに心配してくれてたのかもしれません」


「あんなんでも教師だからな。生徒のことは大事にしてるのか」

「だから、こっちのほうがあたしは好きですよって言いました。そしたら、すごく喜んでました」


「成木先生も、この村で育った人間だからな。故郷を好きになってくれるのはやっぱり嬉しいんだろうよ。……かなりトリッキーな先生だけどな」

「でも、良い先生だと思います」


「まあ、そうかもな」

「……とまあ、そんな話をしてたんです」


「何度も言ってるけど、分からない事があったら何でも聞けよ。些細なことでもいいから、できる力は貸すから」

「はい、ありがとうございます。…………」


「何だ? 俺の顔じっと見て……!? ひょっとして、鼻毛とか生えてるか?」

「いえ、大丈夫ですよ。そういうのじゃないですから」


「そうか、よかった……」

「ただ、今の秀吾くんの様子だけを見てたら、人見知りっていう風には思えないな~って思ったから」


「ん? そうか?」

「はい、こっちから言わなくても、その人のためを思った言葉を言ってくれますし、今みたいに力になるって言ってくれるし、すごく社交的に見えるんです」


「あーそういうことか。……確かに、亮とかに言われたことがあったかもしれないな」

「ですよね? 今の秀吾くんを見る限りは、人見知りをする様子は全くないので」


「でも、見えないだけ、だけどな。これは、あれだよ……人見知りが故っていうのか? ほら、どうしても友達になれる機会ってものが他の人よりも少ないから、その数少ない友達には、親身になって尽くしたくなるっていうの? ……何となく分からないか?」


「それ、すごく分かる気がします。少ないが故に、とっても大事にする……あたしもそうでした」

「だろ? だからじゃないか? 今絵玖に見えてる俺が、そんな風に見えるのは」


「あたしのこと、大事に思ってくれてるってことですか?」

「ああ、当然。……キャンセルは、受け付けないからな?」


「もちろん、そんなことしませんよ。元よりする度胸もないです」

「ならば安心した」


「えへへ……」

「――そろそろ良い時間帯だな。行こうか、送っていくよ」


「はい。アイス、美味しかったです、ごちそうさまでした」

「満足してくれたなら何よりだ」


 ……………………。


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