あの子って、実は意外と……(5)
「だって、純然たる事実じゃない」
「せめて俺がいないところで教えろ。それにな、この学校は同級生が限りなく少ないから普通の学校だったら俺だってそこそこの順位に――」
「40点平均じゃ、どの学校にいっても下位を突っ走ると思うけど?」
「や、やってみなくちゃ分からないじゃないか!」
「そうやって最後はうやむや……変わらないわね~」
「うるせぇ! そうやって余裕こいてられんのも今の内だからな。脳の成長期が来たら、佑香に勝つなんてちょちょいのちょいだからな!」
ちなみに、脳の成長は6歳から10歳の間に急速に成長し、その後はほとんど成長しないらしい。
だから、亮の脳の成長はとっくに止まっている。
「ホント? 大きなこと言い過ぎじゃないの?」
「そんなことはない。今回は……どれか一科目は勝ってやるぞ」
「一科目って、目標低いわね」
「お前が復習をかかさずやっちゃってるからだ!」
「日々の積み重ねの大切さを理解してるじゃないのよ。なのにどうして一夜漬けをしちゃうかな」
「俺にそんな集中力はない!」
高らかに断言できるこいつは、ある意味すごいと思う。
「……こりゃ何言ってもダメね。うん、あきらめよう」
「ちょ、佑香さん。その寂しそうな目線を向けるのは止めてくれませんか?」
「とにかくミャンマーは、前回よりも平均点あげられるように頑張りなさい」
「何だろう……この込み上げてくる寂寞の思いは」
多分それに気付けない限り、亮の成績の上昇は見込めないだろうな。
「そういえば絵玖ちゃん、今回みたいなテストの経験は?」
「え? あ、それはありますけど……あまりテストの点数が成績に左右されない学校だったので、あまり勉強することもなく……そう考えたら、やってないようなものかもしれません」
「そっか~。収録のほうが忙しいと、勉強もする時間がないよね、しょうがないことだよ」
「テストで良い成績とれるのか、不安で仕方ありません」
「分からないことがあったらいつでも聞いて。クラスメイトは助け合わなくちゃ。あ、私以外だったら……この男に聞いても教えてくれると思うわよ」
佑香は俺のほうに振り向くことなく、人差し指を向けてきた。
「秀吾は変態だけど、頭はそこそこいいから教えてもらうといいわ」
「変態は言わなくてもいいんじゃないのかい? 佑香さん」
「事実だもん。好きな女の子のコスプレは?」
「巫女服」
「即答じゃない、これを変態言わずして誰を変態と言う?」
「みんな、何かしらの変態心理は持っているもんだ。たまたま俺は巫女服が好きなだけであって、佑香だってきっとそういう心理を持っているはずだ」
「たまたまにしても、かなりレベルの高い変態心理だと思うんだけど……」
「こればっかりは仕方ない。好きなものは好きなんだ」
「こんな朝っぱらにそんなことをはばからずに言える心は賞賛に値するけど……決してかっこよくないから間違わないでね」
「もちろん、普段は言わないぞ」
「当然よ。……というか、何の話よ」
「お前が好きなコスプレとか聞いてくるからじゃねぇか。俺はかかなくてもいい恥をかくはめになったんだぞ……」
「クラスメイトに隠し事はなし。それがたとえ変態ってことでもね」
「お前な……」
「とにかく、分からないことあったら聞いてみるといいよ。勉強以外にも結構いろんなこと知ってるから」
「はい、ありがとうございます……」
「気軽に、聞いていいからな?」
「はい、今度、聞かせてください」
……よし、ぎこちないけど、今日の目標も達成だ。
「はぁい、おはよう~。ふぁ~あ~、眠い……」
生徒を起こさなければいけない立場の先生が、大きな欠伸をしながら教室に入ってきた。
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