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2.リュウの念願



 外はどっぷりと日が沈み、あたりは真っ暗だ。

 住宅街なので、街灯があちこちに灯っている。

 各家庭から、美味しそうな匂いが漂ってくる。

 リュウは電柱目掛けて走り出そうと前足を勢い良く出した。その途端、リードが引っ張られる。

「バカ犬走るな! 危ないでしょ!」

(香織ほどバカじゃないよ!)

 仕方なく、ゆっくりと電柱目掛けて歩こうとするが、又してもリードが引っ張られる。

「今日はそっちには行かないよ」

 というと、ぐいっと体が反対方向へ向けられる。

「公園行くから」

(えー! ……だから、イヤだったんだよ)

 公園は家から、歩いて2分のところにあるのだ。その間、電柱も大好きな植え込みもないと来ている。かといって、公園内の植え込みにマーキングしたくても、香織はリードを引っ張りっぱなしなのだ。

 結局、何も出来ずにストレスを感じたまま帰宅するのだから、リュウにしてみればたまったものではない。

 公園に着くと、マーキングはおろか、立ち止まることもなくぐるっと一周しただけで帰路に着いた。

 何度か走り出そうと試みたが、リードを持つ香織の力が緩むことがない。

「バーカ、お前の行動はまるっとすっきりお見通しだ!」

(何のフレーズだよ!?)


 家に帰りつくと、母が台所から出てきた。

「やっぱり三歩だったか……」

「でも、ちゃんと公園まで行ったんだから」

 母親が「リュウちゃんは可哀想だね」と頭を撫でてくれるが、結局三歩でも散歩に行っているのだから、その後の散歩は期待できないのだ。

 仕方なく、冷えた体をコタツの布団に寄せ暖を取っていると、香織がコタツに潜り込んできた。

 次の瞬間、香織の手がリュウの尻尾を鷲づかみにして力いっぱい引っ張る。

「キャン!」

 ビックリして、思わず悲鳴に近い声が出る。

 その反応が楽しいらしく、香織の大爆笑が起こる。


 毎日が同じだ。

 どんなにリラックスして、まどろんでいても香織が帰ってきたら、落ち着いてはいられないのだ。

 急に尻尾を引っ張ったり、ひげを引っ張られたり、何もしていないのに頭を叩かれる、反撃して噛みつけば物で殴られる。

 お母さんが、餌を皿に入れるように頼めば、申し訳程度に入れるか、てんこ盛りにするかだ。

 夜はどんなに寒くても、香織の布団に潜り込むことは出来ない。なぜなら、寝相が悪すぎるからだ。蹴飛ばされたことは、一度や二度じゃないのだ。

 とにかく、虐待かといいたくなるほど、悪戯が酷い。

 そんな状態でも、我慢して家出せずに居られるのも、お母さんが優しいからだ。お父さんは、可もなく不可もなくというところだが。とにかく香織はリュウにとって天敵なのだ。

 以前、香織が自室でお菓子を食べていた。その時は香織の友達も一緒だった。

 お菓子の匂いに釣られて、香織の部屋に入っていったのだ。テーブルの上には、美味しそうなお菓子の山だ。

 リュウは、お菓子欲しさに香織の傍で必死に尻尾を振り続けたが、結局貰えなかった。頭にきたリュウが、香織の指先目掛けて口先を持っていったものだから、香織とリュウとで喧嘩になった。

 友達は大笑いしていたが、香織もリュウも結構真剣にやりあった。

 

 リュウの念願。

それは、一度でいいから、香織に一撃食らわせることだった。


最後までお読みいただきありがとうございました。(^人^)感謝♪


リュウちゃん、可哀相ですね(TT)


この先どうなるのか・・・


お楽しみに。

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