返信
数分後。
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スマホが震えた。
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古畑亮。
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香葉は息を止める。
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恐る恐る画面を開く。
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ごめん、、、
でも、今くらいは頼ってもいいんじゃね?
無理して「大丈夫」って言う浜中より
今の方がちゃんと本音っぽい。
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「……。」
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香葉は画面を見つめる。
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何も返せない。
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指が動かない。
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すると。
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さらに数秒後。
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新しいメッセージ。
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だから泣きたいなら
ちょっとくらい泣け
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その瞬間だった。
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「……っ。」
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香葉は思わず顔を覆った。
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もう無理。
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本当に。
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もう無理だった。
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病室には誰もいない。
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個室。
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消灯後。
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誰にも見られない。
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だから。
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今だけは。
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少しだけ。
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許してほしかった。
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香葉は毛布を握る。
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肩が震える。
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涙が止まらない。
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初日の先生の言葉。
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今日の検査室の空気。
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主治医の表情。
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全部。
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全部怖かった。
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怖いなんて思いたくなかった。
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認めたくなかった。
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だって。
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認めたら本当に病気みたいだから。
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認めたら本当に悪くなっているみたいだから。
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でも。
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もう隠せなかった。
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亮は何も知らない。
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検査のことも。
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主治医に言われたことも。
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今どれだけ怖いのかも。
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何一つ知らない。
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なのに。
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無理していることだけは見抜かれている気がした。
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学校でも。
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ホームでも。
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タピオカ屋でも。
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いつもそうだった。
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隠したいことほど、
あっさり見つけられる。
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香葉は涙で滲む画面を見る。
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『だから泣きたいなら
ちょっとくらい泣け』
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その文字がぼやける。
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「……ばか。」
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小さく呟く。
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何で。
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何でそんなこと言うんだろう。
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優しくしないでって言ったのに、、、。
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でも。
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その優しさに救われている自分がいた。
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香葉はスマホを胸に抱きしめる。
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そして。
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今までずっと張り詰めていたものを、
少しだけ手放した。
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病室には静かな夜が流れていた。
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けれど香葉の心は、
ほんの少しだけ軽くなっていた。




