98/171
返信
初日の先生の言葉。
⸻
今日の検査室の空気。
⸻
技師達の表情。
⸻
母の不安そうな顔。
⸻
全部。
⸻
全部思い出してしまう。
⸻
今までずっと押し込めていたものが、
少しずつ溢れ出しそうになる。
⸻
香葉はスマホを握る。
⸻
返信画面。
⸻
何度も文字を打つ。
⸻
消す。
⸻
また打つ。
⸻
消す。
⸻
『大丈夫じゃない』
⸻
消した。
⸻
『怖い』
⸻
消した。
⸻
『会いたい』
⸻
消した。
⸻
「……。」
⸻
違う。
⸻
何か違う。
⸻
そして。
⸻
何度目かの打ち直しの後。
⸻
やっと送信した。
⸻
今泣かせないで、、、
優しくしないで、、、
⸻
送信、、、。
⸻
香葉はスマホを胸に押し当てた。
⸻
心臓がうるさい。
⸻
送っちゃった。
⸻
「……。」
⸻
重いって思われたかな。
⸻
困らせたかな。
⸻
面倒だって思われたかな。
⸻
そんな不安が一気に押し寄せる。
⸻
やっぱり消したい。
⸻
でももう送ってしまった。
⸻
取り消せない。
⸻
香葉は毛布を握る。
⸻
返事なんて来なくていい。
⸻
そう思う。
⸻
でも。
⸻
気になってしまう。
⸻
スマホが震えるのを待っている自分がいる。
⸻
そんな自分が少し嫌だった。
⸻
病室の時計は静かに時を刻む。
⸻
消灯時間。
⸻
でも香葉の心だけは、
全然眠れそうになかった。




