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LINE
母が帰った病室。
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静かだった。
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時計を見る。
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消灯まであと少し。
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病室の明かりも落とされ始めている。
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香葉はベッドへ横になった。
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眠くない。
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でも。
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何も考えたくない。
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そんな気分だった。
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その時。
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ブルッ。
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スマホが震える。
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通知。
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LINE。
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香葉は反射的に画面を見る。
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古畑亮
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「……。」
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胸が苦しくなる。
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今日一日。
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ずっと返事をしていない。
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開けばいいのに。
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たったそれだけなのに。
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指が動かない。
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もし。
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『大丈夫?』
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だったら。
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もし。
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『無理するなよ』
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だったら。
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もし。
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優しい言葉だったら。
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今の自分は、
きっと耐えられない。
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「……。」
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変だな。
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本当は。
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そんな言葉を待っていたはずなのに。
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今は怖い。
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開いた瞬間。
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泣いてしまいそうで。
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弱い自分を認めてしまいそうで。
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怖い。
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香葉はスマホを胸の上へ置く。
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目を閉じる。
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それでも。
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気になる。
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古畑は何て送ったんだろう。
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ホームで待っていた人。
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毎朝歩幅を合わせてくれた人。
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タピオカ屋で怒った人。
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『もう大丈夫じゃないだろこんなの!』
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その声が頭に浮かぶ。
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「……。」
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香葉はゆっくり息を吐いた。
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そして。
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恐る恐る。
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トーク画面を開いた。




