昼食
病室。
⸻
検査から戻ってきた香葉はベッドへ腰掛けていた。
⸻
スマホを手に取る。
⸻
通知。
⸻
クラスLINE。
⸻
母。
⸻
古畑。
⸻
いくつかLINEが届いている。
⸻
「……。」
⸻
開く気になれなかった。
⸻
検査室での技師達の様子。
⸻
そして昨日の主治医の言葉。
⸻
『少し気になる数値が出てる。』
⸻
『まだ詳しく調べないと分からないけどね。』
⸻
穏やかな口調だったのに、その言葉だけが胸に残っている。
⸻
そればかりが頭の中を回っている。
⸻
コンコン。
⸻
「失礼しまーす」
⸻
女性看護師がお昼を持って病室へ入ってきた。
⸻
「お昼ですよ。」
⸻
「ありがとうございます。」
⸻
看護師はテーブルへ昼食を置く。
⸻
そして香葉を見る。
⸻
「食欲どうですか?」
「正直あんまり、、、」
「ちゃんと食べないと、、、笑」
⸻
看護師は笑う。
⸻
「午後もありますからね。」
⸻
香葉は苦笑した。
⸻
その時。
⸻
看護師の視線が香葉のスマホケースへ向く。
⸻
「あっ。」
⸻
「?」
⸻
「そのクマ可愛い。」
⸻
スマホケースに付いた小さな革のクマ。
⸻
香葉は少し笑う。
⸻
「ありがとうございます。」
「高校生は可愛いの見つけるの得意ね。」
「自分で作りました。」
⸻
看護師
⸻
、、、、、、
⸻
「えっ!」
⸻
思わずクマを見直す。
⸻
「これ?」
⸻
「はい。」
⸻
「すごい‼︎」
⸻
「本当に?」
⸻
「本当にです‼︎」
⸻
看護師は感心したように頷いた。
⸻
「お店で売ってそう。」
⸻
香葉は少し照れる。
⸻
「物を作るのが好きなんです。」
⸻
「なるほど、、、笑」
⸻
看護師は納得したように笑った。
⸻
「手先器用そうだもんね。」
⸻
「どうですかね、、、」
⸻
「将来そういう仕事したいの?」
⸻
香葉は少しだけ表情を明るくする。
⸻
「服を作りたいんです。」
⸻
「デザイナー?」
⸻
「はい、、、笑」
⸻
「素敵じゃない!」
⸻
看護師は嬉しそうに言った。
⸻
「夢があるっていいなぁ。」
⸻
香葉は少し俯く。
⸻
夢。
⸻
進路。
⸻
大学。
⸻
色々な言葉が頭をよぎる。
⸻
その時香葉が握っていたスマホが震える。
⸻
ブルッ。
⸻
画面が光る。
⸻
「お友達から連絡?」
「たぶん、、、」
「たぶん?」
⸻
看護師は笑う。
⸻
「まだ見てないので。」
⸻
「あら。」
⸻
「心配してるかもしれないよ。」
⸻
香葉はスマホを見る。
⸻
クラスLINE。
⸻
母。
⸻
古畑。
⸻
「……。」
⸻
看護師はそれ以上聞かなかった。
⸻
「まあ、ご飯食」
⸻
そう言って昼食を指差す。
⸻
「まずはご飯。」
⸻
「はい、、、笑」
⸻
「夢追う人は体力も必要だからね、、、笑」
⸻
そう言い残して看護師は病室を出て行った。
⸻
静かになった病室。
⸻
香葉はスマホを見つめる。
⸻
返した方がいいのかな。
⸻
そう思いながら、
一番上に表示されている古畑の名前。タップしようと指を出して、、、。




