夕食
入院初日。
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夕方。
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窓の外は少しずつオレンジ色に染まり始めていた。
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病室は静かだった。
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母は一度帰宅している。
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明日また来ると言っていた。
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香葉はベッドの上でスマホを見ていた。
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古畑のLINE。
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『次回作も期待してる、、、笑』
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「……。」
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少しだけ笑う。
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その時。
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コンコン。
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病室のドアがノックされた。
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「失礼しまーす。」
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聞き覚えのある声。
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ガラガラ。
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夕食のワゴンが入ってくる。
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香葉は顔を上げた。
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そして。
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、、、
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「あ。」
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向こうも気付いた。
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「お。」
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草川だった。
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去年。
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新人看護師だった草川さん。
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香葉が少しだけ会えるのを楽しみにしていた人。
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草川はワゴンを押しながら笑う。
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「久しぶり。」
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「久しぶりです^_^」
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自然と笑顔になる。
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草川はベッド横へ夕食を置いた。
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「覚えてます?」
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「覚えてるよ。」
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即答だった。
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「浜中さんLINE交換したじゃん。」
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香葉は少し嬉しくなる。
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草川は去年より落ち着いて見えた。
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声も。
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表情も。
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新人感が消えている。
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「草川さんも一年経ちましたね。」
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「そうなんだよ。」
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草川は苦笑する。
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「今年は後輩がいる。」
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「へぇ。」
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「去年の俺みたいな子。」
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「草川さんまだ大変そう、、、笑」
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「めちゃくちゃ大変。」
「自分もまだまだなのに、、、ちょっと先輩っぱくしないといけないし、、、笑」
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即答だった。
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二人とも笑う。
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病室の空気が少し柔らかくなる。
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その後
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草川は
少しだけ表情を変えた。
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「今年。」
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「はい?」
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「長引くかもしれないって聞いた。」
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香葉は黙る。
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笑顔が少しだけ消える。
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草川はそれ以上は言わなかった。
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ただ。
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優しく言った。
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「焦らなくていいから。」
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「……。」
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「ちゃんと治そう。」
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その言葉に。
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香葉は少しだけ安心した。
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去年は新人だった草川さん。
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今年は違う。
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少し頼もしくなっている。
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「はい。」
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香葉は小さく頷いた。
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草川は夕食を指差した。
「で。」
「?」
「まずは食べる。」
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香葉
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、、、
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「食欲ないです。」
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草川
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-_-
「少しでいいから食べる。」
「……。」
「命令。」
「看護師権限?」
「そう。」
絶対違う。
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でも。
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久しぶりに会った草川さんは、
去年より少しだけ先輩らしくなっていた。




