病院
病院。
何度も来ている場所。
何度も歩いた廊下。
何度も座った待合室。
なのに。
今日は少し違って見えた。
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母と並んで診察室へ入る。
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主治医はカルテを見ながら微笑んだ。
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「久しぶり。」
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「こんにちは。」
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香葉も頭を下げる。
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「体調どう?」
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「まあまあです、、、」
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主治医
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、、、
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母
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-_-b
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香葉
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-_-b
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自分でも説得力がないと思った。
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主治医は苦笑しながらカルテを閉じる。
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「明日から本格的に検査始めていきます。」
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香葉は頷く。
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毎年聞く言葉。
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でも今年は少し重い。
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「今日は血液検査。」
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「はい。」
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「それといくつか追加で確認したい項目もあるから。」
問診票を見ながら話を進める主治医。
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「……。」
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追加。
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その言葉が少し引っかかる。
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主治医は優しい口調で続けた。
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「最近疲れやすいでしょ?」
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香葉は黙る。
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「立ち眩みは?」
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「あります。」
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「食欲。」
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「ちょっと落ちてます。」
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横で母が小さく頷いている。
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主治医はメモを取る。
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「分かりました。」
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「まずはしっかり調べよう。」
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「……はい。」
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診察は終わる。
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看護師が呼びに来る。
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「浜中さん、採血室へどうぞ。」
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香葉は立ち上がる。
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その瞬間。
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少しだけ視界が揺れた。
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母の手がそっと背中へ添えられる。
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「大丈夫?」
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「うん。」
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そう答える。
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でも。
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本当は少し違った。
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怖い。
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検査が。
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結果が。
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そして。
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自分の身体が。
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採血室へ向かう途中、
香葉はポケットのスマホを握った。
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画面には昨夜のLINE。
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『新しい自分』
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短い一言。
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それを見て、
少しだけ肩の力が抜けた。
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「よし。」
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小さく呟く。
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まずは血液検査。
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全部はその後だ。




