進路
車は夕方の道路を走る。
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窓の外。
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オレンジ色の光。
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しばらく沈黙が続いていた。
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そして。
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担任が口を開く。
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「古畑。」
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「はい。」
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「お前、芸術学部志望だったな?」
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「はい。」
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亮は頷く。
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「演劇学科に行きたいです。」
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「そうか。」
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担任はハンドルを握ったまま続ける。
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「教室でも踊ってるもんなぁ、、、。」
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「将来はそっちの道に行きたいのか?」
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亮は少し考えた。
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数秒。
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そして苦笑する。
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「一応、、、」
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「一応?」
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「まだ自信ないですけど。」
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本音だった。
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好きだ。
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ダンスは好き。
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でも。
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好きなことと、
仕事にすることは違う。
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そんなことくらい分かっている。
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担任は小さく笑った。
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「なら追いかけろ。」
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「……。」
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「突き進め。」
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亮は顔を上げる。
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担任は前を向いたまま言う。
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「自信なんて後から付いてくる。」
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「まずは走れ。」
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「若いんだから。」
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そして。
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少しだけ口元を緩めた。
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「いつか浜中にかっこいい姿見せてやれ、、、笑」
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亮
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、、、、、、
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「だから違いますって。」
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担任
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「そうか?」
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亮
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「そうです。」
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担任
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「そうかそうか、、、笑」
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全然信じていない。
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亮はため息をついた。
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そして。
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ふと気になっていたことを聞く。
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「浜中の進路は。」
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「ん?」
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「学部。」
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「……。」
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担任は少し考えた。
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そして笑う。
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「個人情報だからなぁ。」
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「ですよね。」
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亮も苦笑する。
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ところが。
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数秒後。
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担任が続けた。
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「まぁ。」
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「本人からも聞くと思うが。」
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亮は先生を見る。
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「他大学希望だ。」
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「え。」
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「最終確認の書類でも外部受験と書いてあった。」
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「だから変わらないだろうな。」
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亮は少し驚く。
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付属校。
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周りのほとんどは内部進学。
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自分もそうだ。
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だから。
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何となく。
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浜中もそうだと思っていた。
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「外部受験……。」
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小さく呟く。
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担任は頷く。
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「夢があるらしい。」
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「……。」
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「詳しくは本人に聞け。」
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亮は窓の外を見る。
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夕焼け。
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流れていく街並み。
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そして。
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ベージュのパンツを履いていた今日の浜中を思い出す。
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夢。
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服。
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レース。
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もしかしたら。
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自分が思っている以上に、
浜中はずっと先を見ているのかもしれない。
そんな気がした。




