母
一台の車が浜中家の前に滑り込む。
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黒塗り。
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大きい。
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見るからに高級車。
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担任
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「おっ。」
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亮
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「……。」
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二人とも思わず見る。
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車が静かに停まる。
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そして。
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運転席からスーツ姿の男性が降りてくる。
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運転手だった。
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担任
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、、、
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亮
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、、、
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運転手は素早く後部座席のドアを開ける。
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そこから現れたのは。
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香葉の母だった。
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「香葉!」
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普段は仕事ができるキャリアウーマン。
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東京支社の責任者。
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そんな雰囲気はどこにもない。
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ただの母親だった。
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心配そうな顔。
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不安そうな声。
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「香葉、大丈夫なの、、、」
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母は駆け寄る。
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香葉
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「お母さん、、、」
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「大袈裟だよ。」
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「大袈裟じゃないわよ!」
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即答だった。
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その後ろ。
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担任と亮。
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完全に固まっている。
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黒塗りの高級車。
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運転手。
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大きな家。
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頭の中で色々な情報が繋がる。
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亮がぽつりと呟いた。
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「浜中……。」
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香葉
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「何。」
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「やっぱりお嬢様だな……。」
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香葉
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-_-
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「違う。」
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「違わない。」
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「違う。」
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「違わない。」
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担任も小さく頷いている。
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香葉
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「先生まで。」
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担任
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「いや。」
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「これはちょっと。」
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「思ってたより凄かった、、、」
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香葉は額を押さえる。
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もう説明する気力もない。
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すると母が二人に向かって頭を下げた。
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「娘がお世話になりました。」
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担任
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「いえいえ。」
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亮
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「いえ。」
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母は亮を見る。
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そして少し微笑んだ。
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「古畑君?」
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亮
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^_^
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「はい。」
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「香葉からよく聞いてます^_^」
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香葉
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-_- -_- -_-
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「聞いてない!」
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母
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「毎朝ホームで待ってくれてる子でしょ?」
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香葉
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「お母さん!」
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亮
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笑笑笑
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担任も笑いを堪えている。
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香葉はもう限界だった。
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体力的にも。
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精神的にも。
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「もう帰る、、、」
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小さく呟く。
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その瞬間。
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少し身体が揺れる。
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母の表情が変わる。
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亮も気付く。
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担任も気付く。
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笑いは一瞬で消えた。
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母は香葉の肩を支えた。
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「今日はもう休みましょう。」
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その声は優しかった。
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でも。
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どこか覚悟を決めたような声でもあった




