タピオカ
駅までの道。
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暑い。
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とにかく暑い。
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終業式は終わった。
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一学期も終わった。
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それなのに。
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香葉の身体は限界だった。
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「……。」
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足が重い。
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呼吸も浅い。
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隣を歩く亮は何度もこちらを見ている。
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だから。
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香葉は立ち止まった。
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「古畑。」
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「ん?」
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「休憩していかない?」
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亮が少し驚く。
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「珍しい。」
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「私だって休憩くらいする、、、」
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「するんだ。」
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「失礼。」
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二人は駅前のタピオカ屋へ入った。
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冷房。
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涼しい。
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それだけで少し生き返る。
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亮はレジへ向かう。
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「何飲む?」
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「適当に。」
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「一番困るやつ。」
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亮が注文している。
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香葉は窓際の席へ座った。
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ふぅ、、、。
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身体が椅子に沈む。
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冷たいテーブル。
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気持ちいい。
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「……。」
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そういえば。
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私。
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何で入ったんだろう、、、。
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タピオカ飲みたい訳じゃない。
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むしろ。
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今は何も飲みたくない。
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食欲もない。
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ただ。
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座りたかった。
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それだけ。
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亮が注文している姿が見える。
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店員さんと話している。
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何か笑っている。
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「……。」
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にしても。
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身体が怠い。
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変だ。
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冷房は効いているのに。
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熱い。
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遠くで氷の音がした。
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カラン。
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誰かの笑い声。
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ドアの開く音。
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全部聞こえる。
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聞こえるはずなのに。
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少しずつ。
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少しずつ。
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遠くなっていく。
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「……。」
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香葉は腕を組むようにしてテーブルへ伏せた。
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ちょっとだけ。
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少しだけ目を閉じる。
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その時。
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「浜中。」
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聞き慣れた声。
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亮だった。
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タピオカを二つ持って戻ってきている。
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「浜中?」
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返事がない。
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亮の表情が変わる。
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「おい。」
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肩へ手を置く。
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熱い。
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嫌なほど。
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熱かった。
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「浜中!」
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さっきまでの余裕は消えていた。
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亮は初めて本気で焦り始める。
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検査入院。
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立ち眩み。
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顔の赤さ。
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全部が頭をよぎる。
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そして。
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これはもう。
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夏バテじゃない。
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そんな予感がした。




