担任
「それでは。」
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担任が教壇の前に立つ。
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「二学期になったら学部決定試験があります。」
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教室が少し静かになる。
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流石に進路の話はみんな聞く。
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「外部受験者以外はテストに向けてしっかり学習する様に。」
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「行きたい学部に行ける様に。」
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「外部受験者は希望の大学に行ける様に。」
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「それぞれしっかりと夏休みも学習する様に。」
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数人が小さくため息をつく。
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担任は苦笑した。
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「以上。」
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一拍。
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そして。
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「皆んな有意義な夏休みを。」
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終業式終了。
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教室が一気に騒がしくなる。
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「終わったー!」
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「海行こうぜ!」
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「補習組頑張れ、、、笑」
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「うるさい、、、」
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鞄を持つ音。
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椅子を引く音。
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笑い声。
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いつもの教室。
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でも。
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一学期最後の教室。
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香葉はゆっくり鞄を持つ。
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帰ろう。
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そう思った時だった。
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「浜中。」
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担任の声。
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「ちょっと。」
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香葉
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、、、
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「はい?」
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担任は教室前方から手招きする。
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周囲の生徒達が一斉に見る。
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「何したの浜中、、、笑」
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「補習?」
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「違うから、、、」
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根元さん達が騒ぐ。
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香葉はため息をつきながら前へ向かう。
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気付けば教室には数人しか残っていない。
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亮もまだいる。
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担任は香葉が来るのを確認してから、
少し声を落とした。
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「体調。」
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「……。」
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香葉の動きが止まる。
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「大丈夫か?」
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優しい声だった。
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責める訳でもない。
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問い詰める訳でもない。
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ただ確認している。
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香葉は少し視線を落とした。
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「大丈夫です。」
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反射みたいに出た言葉。
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担任は苦笑する。
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「それ古畑にも言ってたろ。」
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香葉
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、、、、、、
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後ろを見る。
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まだ教室にいる亮。
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担任
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「古畑の顔に書いてある。」
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「心配ですって。」
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香葉は思わず吹き出しそうになる。
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後ろでは亮が
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-_-
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みたいな顔をしている。
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「来週入院なんだってな。」
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「はい。」
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「検査だけならいいんだけどな。」
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担任の言葉に、
香葉は少しだけ黙った。
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自分でも分からない。
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だから怖い。
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担任は続ける。
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「何かあったら学校のことは気にするな。」
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「クラスのことも。」
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「ちゃんと戻ってこい。」
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香葉は小さく頷いた。
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「はい。」
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その返事だけは、
さっきの『大丈夫です』よりずっと素直だった。
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そして教室の後ろ。
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亮は窓際にもたれながら、
そんな二人のやり取りを静かに見ていた。
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何となく。
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胸騒ぎがしていた。
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それが何なのかは、
まだ分からなかった。




