終業式
終業式。
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七月。
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夏。
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教室。
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香葉は自分の席に座っていた。
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窓から入る風。
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蝉の声。
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相変わらず暑い。
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でも。
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体育館へ移動しなくていいだけマシだった。
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前方のモニターには学校のロゴ。
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その横には
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『終業式配信中』
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の文字。
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今は便利になったもんだ。
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昔みたいに全校生徒が体育館へ集まらなくても、
教室でリモート。
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正直助かる。
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この暑さで体育館だったら、
今頃倒れていたかもしれない。
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「皆さん、おはようございます。」
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校長先生の声がスピーカーから流れる。
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教室中の生徒が一応前を見る。
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一応。
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本当に一応。
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「夏休みは規則正しい生活を、、、」
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「交通事故には十分気をつけて、、、」
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校長先生の話が続く。
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その頃。
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後ろの席。
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根元さんは既に机へ突っ伏していた。
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寝ている。
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絶対寝ている。
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隣では渡が必死に起こしている。
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香葉は思わず笑った。
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すると。
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コンッ。
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小さな音。
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後を見る。
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古畑亮。
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少し離れた席。
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ペンを持っている。
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『大丈夫?』
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ルーズリーフに書いてある。
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香葉
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、、、
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『先生の話聞け』
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そう書いて見せる。
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亮は吹き出しそうになる。
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『聞いてる』
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嘘だ。
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絶対聞いていない。
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香葉は小さく笑う。
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その時。
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校長先生の声。
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「最後に皆さん。」
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教室が少し静かになる。
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「高校生活の時間は有限です。」
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「友人との時間を大切にしてください。」
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「皆さんが思っている以上に、
今という時間は貴重です。」
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香葉は何となく窓の外を見る。
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青空。
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入道雲。
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そして。
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隣の校庭。
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クラスレクをした場所。
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楽しかった。
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本当に。
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だから。
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この夏も。
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まだ続く気がしていた。
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来週には検査入院。
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その後また学校。
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文化祭。
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卒業。
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当たり前のように。
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そう思っていた。
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その時の香葉はまだ知らない。
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来週の病院で、
思っていたよりずっと大きな現実と向き合うことになることを。
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そして。
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その時。
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真っ先に思い浮かぶ相手が、
古畑亮になることも。




