通学路
駅を出る。
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学校までは徒歩数分。
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いつもの道。
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見慣れた景色。
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夏の日差し。
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朝なのに暑い。
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蝉の声が響いている。
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香葉はゆっくり歩く。
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隣には亮。
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「……。」
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何となく気付く。
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歩きやすい。
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いや。
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違う。
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古幡が合わせている。
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私の歩幅に。
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普段ならもっと速い。
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ダンスをやっているからか、
歩くのも速い。
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なのに今日は違う。
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「……。」
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香葉は少しだけ前を見る。
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亮の横顔。
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やっぱり合わせている。
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気付いてしまった。
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「古畑。」
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「ん?」
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「ちゃんと学校行けるから。」
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「うん。」
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「先行っていいよ。」
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亮は即答する。
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「一緒に行く。」
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「いい。」
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「行く。」
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「いい。」
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「行く。」
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「……。」
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「……。」
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二人とも譲らない。
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香葉はため息をついた。
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「頑固。」
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「知ってる。」
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亮は少し笑う。
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でも。
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その笑顔はすぐ消えた。
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「浜中。」
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「何。」
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「さっきから呼吸荒い。」
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香葉の肩が少しだけ揺れる。
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「暑いから。」
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反射的に答える。
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「顔も赤い。」
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「暑いから。」
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「汗も多い。」
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「夏だから。」
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亮は立ち止まった。
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香葉もつられて立ち止まる。
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「……。」
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「……。」
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亮は数秒黙った。
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そして。
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「浜中。」
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少し低い声。
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「俺、馬鹿じゃない。」
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香葉は思わず視線を逸らした。
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、、、、、、
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亮はため息をつく。
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「終業式出たら帰る。」
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「帰る。」
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「約束。」
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「約束。」
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少し間が空く。
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そして。
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亮はもう一度歩き出した。
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今度はさっきより少しだけゆっくり。
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香葉も隣を歩く。
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その背中を見ながら思う。
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やっぱり。
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この人には隠し事がしにくい。
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知られたくないことまで、
すぐ気付いてしまう。
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それが少し困る。
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でも。
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今日は少しだけ。
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ありがたかった。
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学校の門が見えてくる。
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終業式まで、
あと少しだった。




