車内
電車の中。
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冷房は効いている。
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窓の外の景色がゆっくり流れていく。
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朝の車内。
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混んではいるけれど、
ぎゅうぎゅうではない。
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香葉と亮はドア横に立っていた。
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亮はさっき渡されたスポーツドリンクを持っている。
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香葉はお茶。
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しばらく他愛もない話をしていた。
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終業式。
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夏休み。
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クラスレク。
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そんな話。
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そして。
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ふと。
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亮の表情が変わった。
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「浜中。」
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「ん?」
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「顔赤い。」
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香葉は一瞬固まる。
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「暑いから。」
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即答。
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亮は窓の外を見る。
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そして。
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車内を見回す。
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冷房。
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かなり効いている。
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「そうか?」
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「そう。」
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「そうかな。」
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「そう。」
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香葉は少し強めに言う。
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亮は黙る。
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でも。
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納得していない顔。
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香葉は視線を逸らす。
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正直。
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自分でも分かっていた。
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駅へ向かう途中から。
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身体が熱い。
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だるい。
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でも。
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終業式だけだし。
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今日を乗り切れば。
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そう思っている。
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その時。
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コトッ。
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亮がスポーツドリンクを香葉の頬へ当てた。
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「ひゃっ、、、」
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冷たい。
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思わず肩が跳ねる。
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亮は真顔だった。
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「熱あるんじゃない。」
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「ない。」
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「ある。」
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「ない。」
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「ある。」
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小学生みたいな会話。
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香葉は思わず笑う。
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「何そのやり取り、、、笑」
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亮も少し笑った。
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でも。
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目だけは笑っていなかった。
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心配している。
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それが分かる。
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香葉は小さく息を吐いた。
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そして。
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「終業式終わったら帰るから。」
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「……。」
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「ちゃんと帰る。」
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亮は少し考えて。
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小さく頷いた。
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「約束な。」
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香葉は窓の外を見る。
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流れていく景色。
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首元のペンダントを指先で触る。
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大丈夫。
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あと少し。
本当にあと少しだから。
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そう自分に言い聞かせながら、
香葉は小さく微笑んだ。




