駅
駅前。
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香葉は自動販売機の前で立ち止まる。
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冷たい風が吹き出す音。
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並んだペットボトル。
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どれにしよう。
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数秒考えて。
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スポーツドリンク。
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そしてお茶。
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二本買う。
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ガコン。
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ガコン。
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ペットボトルを取り出す。
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ひんやり冷たい。
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少しだけ気持ちいい。
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「よし。」
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改札を抜ける。
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階段を上る。
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見慣れたホーム。
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いつもの場所。
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そして。
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やっぱりいた。
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古畑亮。
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ホームのベンチに座っている。
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スマホを見ているようで。
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見ていない。
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電車が来る方向ばかり見ている。
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「……。」
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香葉は少し笑った。
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本当に待ってた。
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暇人。
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いや。
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結構忙しい人。
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香葉はゆっくり近付く。
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すると。
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まだ数メートル離れているのに。
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亮が顔を上げた。
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「お。」
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目が合う。
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「来た。」
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香葉は呆れたように笑う。
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「来た。」
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亮が立ち上がる。
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そして。
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香葉の顔を見る。
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ペンダント。
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ブラウス。
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レース付きのワイドパンツ。
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でも。
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まず目が止まったのは。
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首元だった。
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「それ。」
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亮が指差す。
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香葉は首元に触れる。
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「ん?」
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「ペンダント。」
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「あぁ。」
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香葉は少し笑った。
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「気付いた。」
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「気付く。」
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即答。
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「珍しいから。」
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そう言いながら。
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亮はまだペンダントを見ていた。
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香葉は手に持っていたスポーツドリンクを差し出す。
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「はい。」
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「え?」
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「買ってきた。」
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亮は少し驚く。
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「俺の?」
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「他に誰がいるの。」
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「確かに。」
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亮は受け取る。
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冷たいペットボトル。
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その瞬間。
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香葉は少しだけ思った。
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ちゃんと頼れ。
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そう言ったのは古畑だった。
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でも。
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今日は。
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少しだけ。
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自分も誰かを頼ってみようと思えた。




