駅まで
終業式の日。
夏の朝。
駅へ向かう道。
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蝉が鳴いている。
空は青い。
雲もほとんどない。
見事なくらいの夏空。
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香葉は日傘を差しながら歩いていた。
ベージュのワイドパンツ。
自作のレース。
父からもらったペンダント。
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鏡の前では完璧だった。
少しだけ気分も良かった。
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でも。
「……。」
暑い。
やっぱり暑い。
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朝なのに。
まだ九時前なのに。
太陽が容赦ない。
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駅まであと少し。
本当にあと少し。
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見慣れた駅舎も見えている。
なのに。
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足が重い。
身体が言うことを聞かない。
呼吸が浅い。
視界も少し霞む。
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「はぁ……。」
立ち止まる。
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木陰。
電柱の影。
少しでも日陰を探してしまう。
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大丈夫。
駅まで行けば。
ホームは屋根がある。
電車は冷房が効いている。
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学校へ着けば。
終業式だけ。
今日を乗り切れば。
検査入院まで少し休める。
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そう思う。
そう思いたい。
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でも。
身体は正直だった。
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「……。」
限界かも、、、
そんな言葉が頭をよぎる。
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その瞬間。
スマホが震えた。
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、、、
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亮
『今どこ?』
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香葉は思わず笑う。
何でこのタイミング。
本当に。
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何で分かるんだろう。
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ホームで待っているのかもしれない。
いつものように。
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香葉は木陰にもたれながら、
ゆっくり返信画面を開いた。
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そして。
少しだけ迷った。
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いつもなら。
『もうすぐ。』
そう返す。
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でも今日は。
亮の言葉が頭をよぎる。
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『ちゃんと頼れ。』
『大丈夫じゃない時くらい。』
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香葉は小さく息を吐いた。
そして。
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指を動かした。




