夜の部屋
夜。
浜中家。
自室。
⸻
カチ。
カチ。
⸻
かぎ針がレースを編む音だけが響く。
机の上には編みかけのレース。
⸻
窓の外では虫の声。
夏の夜だった。
⸻
香葉は手を動かしながら、
昼間のことを思い出していた。
⸻
『ちゃんと頼れ。』
『大丈夫じゃない時くらい。』
⸻
亮の声。
何度も頭の中で繰り返される。
「……。」
変な人。
本当に。
⸻
スマホへ手を伸ばす。
LINE。
古畑亮。
トーク画面を開く。
⸻
少し考える。
そして打ち込む。
⸻
ありがとう、、、。
いつか頼る、、、
⸻
送信ボタンの上で指が止まる。
「……。」
恥ずかしい。
無理。
絶対無理。
⸻
その時。
お知らせが更新されました。
クラスルームからの通知。
⸻
香葉はそちらを開いた。
⸻
昼間の集合写真だった。
担任が投稿したらしい。
⸻
『今日はお疲れ様。高校最後のクラスレクでした。』
⸻
写真の中。
みんな笑っている。
根元さん。
蛍原さん。
びしょ濡れの古畑。
そして。
自分も笑っていた。
⸻
「……。」
⸻
その時。
香葉は気付く。
「あっ、、、」
今日ブログ当番だ。
慌ててクラスブログを開く。
⸻
何を書くか考える。
数分。
そして書き始めた。
⸻
自分の弱さを認められないのは、
自分を信じすぎているからなんだって。
そう考えられるようになってからは、
弱い自分を多少認められるようにはなったかもしれない。
今日は楽しかった^_^
⸻
投稿。
送信完了。
⸻
香葉はスマホを置いた。
そして。
LINEの画面を見る。
ありがとう、、、。
いつか頼る、、、
⸻
まだ残っている。
数秒考えて。
全部消した。
⸻
「……まだいいや。」
小さく笑う。
⸻
でも。
今日は少しだけ。
自分の弱さを認められた気がした。
それだけで十分だった。




