頼れ
担任が出て行く。
ガラッ。
バタン。
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教室には再び静けさが戻った。
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「……。」
「……。」
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ちょっとだけ気まずい。
いや。
かなり気まずい。
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香葉は窓の外を見る。
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亮は机に軽く腰を預ける。
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さっきまで普通だったのに。
検査入院の話をした途端、
空気が変わってしまった気がした。
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沈黙。
蝉の声だけが聞こえる。
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そして。
亮が口を開いた。
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「浜中。」
「何。」
「たまに、、、。」
少し言葉を選ぶ。
「弱さを認めてもいいんじゃない。」
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香葉は黙った。
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亮は続ける。
「浜中は自分を過信しすぎ。」
「……。」
「大丈夫、平気、何とかなる。」
亮は苦笑した。
「ずっとそう言ってる。」
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香葉は反射的に言い返す。
「だって実際何とかなってるし。」
「今日何とかなってなかった。」
即答だった。
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香葉の言葉が止まる。
「……。」
「体育館の横でも。教室でも。立てなくなってた。」
亮は静かだった。
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怒っている訳じゃない。
責めている訳でもない。
だから余計に刺さる。
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「浜中。」
「……。」
「俺さ。」
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少し笑う。
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「暇人だから。」
香葉は思わず吹き出した。
「結構忙しいんじゃなかったの。」
「結構忙しい。」
即答。
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二人とも少し笑う。
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でも。
亮の目は真面目だった。
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「だから分かる。」
「何が。」
「無理してる人。」
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香葉は視線を落とす。
机の木目を見る。
言い返せない。
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本当は。
自分でも分かっている。
六月から。
ずっと。
身体がおかしいことくらい。
分かっている。
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でも。
認めたら怖い。
認めたら、、、
本当に何か悪いんじゃないかって思ってしまう。
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「……。」
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その時。
亮がぽつりと言った。
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「俺はさ。」
香葉が顔を上げる。
「浜中が思ってるより心配してる。」
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一瞬。
言葉の意味が入ってこなかった。
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亮は少し照れ臭そうに笑う。
「だから、、、ちゃんと頼れ、、、大丈夫じゃない時くらい、、、」
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夕陽が教室に差し込む。
香葉は何も言えなかった。
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ただ。
胸の奥が少しだけ熱くなった。
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それが何なのかは、
まだ分からなかった。




