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秘密

「帰る。」



香葉は小さく言った。



鞄を持つ。

机の横に掛けてあったトートバッグ。

いつもの動作。



いつものはずだった。



立ち上がる。

その瞬間。



ふわっ。

「……。」

視界が揺れる。

教室の床が遠くなる。

窓。

机。

黒板。

全部が少し傾いた。



まずい、、、。

そう思った時には、

身体がぐらりと揺れていた。



「浜中!」

亮の声。



次の瞬間、

肩を支えられる。

香葉は反射的に机へ手をついた。

「……っ。」

呼吸を整える。



数秒。

長く感じた。

ようやく視界が戻る。



「ごめん。」

また謝ってしまった。

亮は笑わなかった。



「病院。」



短い言葉。



香葉は顔をしかめる。

「行かない。」

即答。

「何で。」

「もうすぐ検査入院だから。」

言ってしまった、、、。



香葉自身も、


言うつもりはなかった。



教室が静かになる。



亮も黙った。



「検査入院?」



香葉は小さく息を吐く、、、。

隠しきれない。

もう無理だ。



「毎年。」



窓の外を見る。



グラウンドはもう乾いている。

さっきまでの賑やかさが嘘みたいだった。



「毎年あるの。」

「……。」

「だから大丈夫。」



その言葉は、

亮に向けたものなのか。

自分に言い聞かせたものなのか。

香葉にも分からなかった。



ただ。



亮の表情は、

今まで見たことがないくらい真剣だった。



夏休み間近の日。二人の間に、

初めて本当の秘密が顔を出した。

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