疑問
亮は校庭へ戻っていく。
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「古畑ぁぁぁ笑笑」
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「遅いぞー笑笑」
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「裏切り者ー!」
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すぐにクラスメイト達に囲まれる。
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相変わらずだ。
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香葉は体育館横の日陰からその背中を見ていた。
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眩しい。
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夏の日差しのせいか。
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それとも。
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別の理由か。
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「……。」
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ふと考える。
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最初は。
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本当にくだらないことだった。
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男子の間で流行っていた遊び。
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クラスの女子を誘うとか。
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仲良くなるとか。
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そんな軽いノリ。
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だから。
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どうせすぐ終わると思っていた。
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数日。
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長くても一週間。
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そう思っていた。
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なのに。
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気付けば七月。
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二ヶ月以上経っている。
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毎朝ホームで待っている。
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学校で見つける。
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帰りも気にする。
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体調を気にする。
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「無理すんなよ。」
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何度聞いただろう。
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「……。」
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香葉は膝を抱えた。
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何でなんだろう。
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何でいつも私を見てるんだろう。
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何で気にするんだろう。
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別に。
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クラスで一番明るい訳でもない。
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面白い訳でもない。
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目立つ訳でもない。
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むしろ逆だ。
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目立たないようにしている。
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なのに。
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古畑だけは見つける。
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気付く。
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知られたくないことまで。
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隠したいことまで。
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すぐ気付いてしまう。
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駅で疲れていること。
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体育館横へ逃げたこと。
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さっきだってそうだ。
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立ち上がった瞬間。
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真っ先に気付いた。
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「……。」
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香葉は小さく笑った。
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不思議な人。
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面倒臭い人。
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暇人。
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『結構忙しい。』
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思い出して少し笑う。
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いや。
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本当に忙しいのかもしれない。
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私を気にするのに。
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そんなことを考えてしまった自分に、
香葉は少し驚いた。
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その時。
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校庭から笑い声。
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古畑がまた水風船をぶつけられている。
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「何で俺ばっかり笑笑」
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「反応が面白いからー笑笑」
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みんなが笑う。
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香葉もつられて笑った。
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そして。
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ほんの少しだけ。
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思う。
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来年の夏。
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私は何をしているんだろう。
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古畑は何をしているんだろう。
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そんなことを考えた自分に、
今度は少しだけ戸惑った。
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風が吹く。
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校庭には夏の光が降り注いでいた。




