↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
49/244

大丈夫

「大丈夫だから……。」



香葉は小さく笑った。



まだ少し顔色は良くない。



それでも。



さっきよりは落ち着いていた。



「もう少し休めば……。」



体育館横の日陰。



吹き抜ける風が心地良い。



香葉は校庭を見る。



水しぶき。



笑い声。



全力で走り回るクラスメイト達。



そして。



びしょ濡れになっている古畑亮。



いや。



今は隣にいる。



香葉は少しだけ笑った。



「古畑はもう少し楽しみなよ……笑」



亮は何も言わない。



香葉は続けた。



「せっかくのクラスレクなんだから。」



「……。」



「私なら大丈夫。」



その言葉に、


亮は小さく息を吐いた。



「浜中。」



「ん?」



「それ何回目。」



香葉は思わず笑う。



「知らない。」



「俺は結構聞いてる。」



「暇人。」



反射みたいな返事。



亮は少しだけ口元を緩めた。



「結構忙しい。」



いつものやり取り。



いつもの言葉。



でも今日は少し違った。



亮は校庭を見ない。



みんなの方を見ない。



ただ香葉を見る。



その様子に香葉は少しだけ首を傾げた。



「何。」



「別に。」



今度は亮だった。



「絶対別にじゃない。」



香葉が言う。



亮は少し笑った。



「見てた。」



「何を。」



「浜中。」



香葉が固まる。



「……。」



「今日。」



亮は少し照れ臭そうに後頭部を掻いた。



「楽しそうだった。」



風が吹く。



一瞬。



時間が止まった気がした。



「そう?」



「うん。」



亮は頷く。



「なんか。」



言葉を探す。



「良かった。」



香葉は校庭へ視線を向けた。



みんな笑っている。



根元さんが走っている。



蛍原さんが本気で水鉄砲を撃っている。



そして。



自分もさっきまで笑っていた。



「……。」



そうか。



楽しかったんだ。



思った以上に。



その時。



遠くから再び声が飛ぶ。



「古幡ぁぁぁ!!笑」



「戻ってこーい!!笑」



亮はため息をついた。



「呼ばれてる。」



「行ってきなよ。」



香葉は笑う。



「クラスの人気者。」



「違う。」



「違わない。」



亮は立ち上がる。



そして数歩歩いたところで振り返った。



「浜中。」



「何。」



「無理すんなよ。」



香葉は少しだけ目を細める。



そして。



いつものように答えた。



「大丈夫だから。」



亮は笑った。



「だからそれ何回目、、、笑」



ようやく。



少しだけ安心したように。



校庭へ走り出していった。



香葉はその背中を見送る。



眩しい夏の日差しの中。



古畑亮は相変わらずだった。



そして香葉はまだ知らない。



その背中を見ながら、


少し寂しいと思ってしまった自分に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。