表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/64

ごめん

「ごめん……。」



香葉は小さく呟いた。



自分でも驚くくらい弱々しい声だった。



亮の腕を掴んでいた手を、


ゆっくり離す。



指先が少し震えていた。



香葉は近くのベンチへ腰を下ろした。



「……。」



俯く。



情けなかった。



本当は。



大丈夫なつもりだった。



少し休めば戻れると思っていた。



みんなと一緒に最後まで楽しめると思っていた。



なのに。



立ち上がっただけでこれだ。



悔しい。



そんな感情が胸の奥に広がる。



亮は何も言わなかった。



隣にも座らない。



少し離れた場所に立ったまま。



ただ香葉を見ている。



それが逆にありがたかった。



数秒。



沈黙。



校庭からは相変わらず楽しそうな声。



「古畑ー!笑」



「浜中ー!笑」



「逃げるなー!」



誰かが叫んでいる。



二人とも反応しない。



その時。



亮が静かに口を開いた。



「浜中。」



「……。」



「最近ずっとこうなの?」



香葉の肩が小さく動く。



聞かれると思った。



いつか。



でも。



今は答えたくなかった。



答えたら。



認めることになる気がした。



自分が思っている以上に、


体調が悪いことを。



だから。



「……別に。」



いつもの言葉。



でも。



いつもみたいな強さはなかった。



亮は苦笑した。



「その”別に”信用ない。」



香葉は少しだけ笑った。



「失礼。」



「本当。」



また少し沈黙。



風が吹く。



体育館の影が揺れる。



そして。



亮は珍しく視線を逸らしたまま言った。



「無理してほしくない。」



香葉は顔を上げる。



亮は校庭を見ていた。



まるで独り言みたいに。



「……。」



香葉は何も言えなかった。



心配されるのは苦手だ。



でも。



今の言葉は不思議と嫌じゃなかった。



その時。



遠くから根元さんの声。



「古畑ぁぁぁー!!笑笑」



「浜中ぁぁぁー!!笑笑」



「サボるなぁぁぁー!!笑笑」



一気に現実へ引き戻される。



香葉は思わず吹き出した。



亮も笑った。



さっきまで少し重かった空気が、


少しだけ軽くなる。



夏の日差しは相変わらず眩しかった。



でも。



香葉はもう少しだけ、


ここで休んでいこうと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ