休憩中
「おーい!」
⸻
遠くから声が聞こえる。
⸻
「逃げるなー笑笑」
⸻
「浜中ー!」
⸻
「古畑もいるぞー!」
⸻
校庭から手を振るクラスメイト達。
⸻
相変わらず賑やかだ。
⸻
香葉は思わず笑った。
⸻
「戻ろっ……笑笑」
⸻
亮を見る。
⸻
亮も少し笑う。
⸻
「大丈夫か?」
⸻
「大丈夫。」
⸻
いつもの返事。
⸻
香葉は体育館の壁から身体を離した。
⸻
そして一歩踏み出す。
⸻
その瞬間。
⸻
ふわっ。
⸻
世界が揺れた。
⸻
「あ……。」
⸻
地面が遠くなる。
⸻
空が傾く。
⸻
視界の端が白く霞む。
⸻
足に力が入らない。
⸻
まずい。
⸻
そう思った時にはもう遅かった。
⸻
ぐらり。
⸻
身体が前へ倒れる。
⸻
「浜中!」
⸻
亮の声。
⸻
次の瞬間。
⸻
肩を掴まれた。
⸻
強く。
⸻
でも優しく。
⸻
香葉は反射的に亮の腕を掴む。
⸻
「……。」
⸻
「……。」
⸻
数秒。
⸻
風の音だけが聞こえた。
⸻
校庭の笑い声が遠い。
⸻
亮の表情が目の前にある。
⸻
さっきまでの笑顔は消えていた。
⸻
「浜中。」
⸻
低い声。
⸻
「今のは気のせいじゃない。」
⸻
香葉は何も言えない。
⸻
言い返そうと思った。
⸻
大丈夫だと。
⸻
いつもみたいに。
⸻
でも。
⸻
言葉が出てこなかった。
⸻
亮は少しだけ息を吐く。
⸻
「座れ。」
⸻
「……。」
⸻
「頼むから。」
⸻
その言葉に、
香葉は初めて亮の本気を感じた。
⸻
心配している。
⸻
ごまかせないくらい。
⸻
校庭ではまだクラスレクが続いている。
⸻
夏の笑い声。
⸻
水しぶき。
⸻
青空。
⸻
だけど体育館横の日陰だけは、
少し違う時間が流れ始めていた。




