昼休み
昼休み。
スマホが震えた。
お知らせが更新されました
教室のあちこちで同じ通知音が鳴る。
「誰?」
「ブログじゃない?」
「今日担当誰だっけ。」
そんな声が聞こえる。
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後ろの席で友達が言った。
「あ、浜中じゃん。」
「え?」
香葉は顔を上げた。
「今日更新したの?」
「した。」
「珍しく早いね。」
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実は一時間目の休み時間にさっさと書いてしまった。
書くことがなかったから。
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文章書くのが上手くなりたいなぁと思ってる最近です!
食べた物、あった出来事、最近やったこと、見た人が何それ!って興味を持つようなことをしゃべりたい!
なんか、これって書く前は凄い頭の中に思い浮かぶんですけど、いざ書くってなると忘れてしまいます。
これはあるあるなんでしょうか、それともないないでしょうか、
答えは君の心の中に!
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送信してから思った。
我ながら中身がない。
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「最後の何?」
友達が笑う。
「知らない。」
「答えは君の心の中に!って。」
「なんとなく。」
「適当すぎる。」
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その時。
教室後方から声がした。
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「あるあるだろ。」
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香葉が振り返る。
古畑亮だった。
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「何が。」
「ブログ。」
「読んだの?」
「読んだ。」
「早くない?」
「暇だから。」
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絶対暇じゃないだろ。
友達に囲まれて騒いでいたくせに。
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「あるあるだと思う。」
亮は言った。
「思いついた時は天才なんだけどな。」
「分かる。」
「書こうとすると消える。」
「分かる。」
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思わず即答してしまう。
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「だろ?」
亮が笑う。
「だから俺メモする。」
「へぇ。」
「スマホに。」
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意外だった。
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「メモとかするの?」
「する。」
「意外。」
「失礼だな。」
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友達が吹き出す。
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「でも浜中。」
「何。」
「最後のやつ。」
「どれ。」
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亮はスマホを見ながら読み上げる。
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『答えは君の心の中に!』
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周りから笑いが起きた。
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「やめて。」
「いや面白い。」
「面白くない。」
「絶対勢いで書いただろ。」
「……。」
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図星だった。
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「図星じゃん。」
「うるさい。」
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亮は楽しそうに笑う。
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その顔を見ていると不思議だった。
前ならイラッとしたはずなのに。
最近は少し違う。
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少しだけ。
ほんの少しだけ。
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「古畑。」
「ん?」
「昨日のブログ。」
「おう。」
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亮がこちらを見る。
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「意外だった。」
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それだけ言った。
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亮は一瞬だけ驚いた顔をする。
そして。
少し照れくさそうに笑った。
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「そりゃどうも。」
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チャイムが鳴る。
昼休み終了。
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みんなが席へ戻り始める。
香葉も前を向く。
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だけど。
なんとなく。
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今日は少しだけ教室の空気が明るく見えた。
六月最初の昼休み。
そんな何でもない時間だった。




