レク中
「待ってぇぇぇ笑笑」
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香葉は笑いながら逃げる。
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後ろから女子達の笑い声。
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前では古畑が水風船の餌食になっている。
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校庭中が賑やかだった。
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夏の匂い。
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濡れた地面。
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青空。
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笑い声。
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全部が眩しい。
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香葉は立ち止まる。
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肩で息をする。
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「はぁ……笑」
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楽しい。
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本当に。
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最近で一番楽しいかもしれない。
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学校へ来て良かった。
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みんなに会えて良かった。
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クラスレクに参加して良かった。
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そう思う。
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でも。
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「……。」
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少しだけ。
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息が上がり過ぎている気がした。
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走ったから。
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笑ったから。
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暑いから。
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そういうことだと思いたい。
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でも。
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胸の奥が苦しい。
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呼吸を整えても。
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なかなか戻らない。
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「……。」
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視界が少しだけ揺れる。
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太陽の光が妙に眩しい。
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校庭の音が遠く聞こえる。
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みんなは楽しそうだ。
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古畑も笑っている。
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根元さんは相変わらず大騒ぎしている。
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蛍原さんはなぜか本気で水鉄砲を撃っている。
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その光景が少し遠く感じた。
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楽しい。
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本当に楽しい。
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だから。
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終わってほしくない。
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でも。
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身体が言うことを聞かない。
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「……。」
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香葉はそっと日陰へ視線を向けた。
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少し休めば大丈夫。
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きっと。
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少しだけ。
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本当に少しだけ。
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休めば。
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そう思いながら、
香葉は静かに歩き始めた。
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その背中を、
少し離れた場所から見ている人がいることに、
まだ気付いていなかった。




