朝
翌朝。
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カーテンの隙間から朝日が差し込む。
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チュンチュン。
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鳥の鳴き声。
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香葉はゆっくり目を開けた。
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時計を見る。
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六時二十分。
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いつもより少し早い。
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「……。」
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天井を見つめる。
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身体の重さを確認する。
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昨日みたいな強い怠さはない。
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頭もすっきりしている。
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少し安心した。
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「よかった。」
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思わず声が漏れる。
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本当に少しだけ。
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ここ数日、
朝起きるたびに体調を確認するのが癖になっていた。
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起きられるかな。
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学校行けるかな。
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そんなことを考えてしまう。
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香葉はベッドから起き上がった。
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その時。
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机の上が目に入る。
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スケッチブック。
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色鉛筆。
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編みかけのレース。
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そして。
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昨日の記憶。
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『これ完成したら見せて。』
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「何で見たいんだろ。」
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思わず笑う。
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普通そんなこと言う?
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言わない気がする。
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少なくとも香葉なら言わない。
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「変な人。」
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二日連続で同じ感想だった。
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その時。
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スマホが震える。
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通知。
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香葉は何気なく画面を見る。
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古畑亮
おはよう
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香葉
「……。」
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数秒固まる。
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まだ六時半前。
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「早。」
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思わず口に出る。
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しかも。
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用件なし。
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おはようだけ。
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香葉は画面を見つめる。
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返信するか迷う。
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三十秒。
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一分。
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二分。
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そして。
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香葉
おはよう
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送信。
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数秒後。
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既読。
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早い。
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亮
生きてるな
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香葉
失礼
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亮
今日も暑いらしい
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香葉
六月なのにね
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亮
溶ける
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香葉は思わず吹き出した。
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昨日。
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教室で誰かが言っていた言葉。
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亮だったのかもしれない。
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スマホを置く。
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不思議だった。
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たったこれだけのやり取りなのに。
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少し気分が軽い。
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窓の外を見る。
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青空。
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今日も暑くなりそうだ。
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高校三年生の六月。
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新しい一日が始まろうとしていた。




