笑
リビング。
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笑いながら麦茶を飲む。
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さっきまで学校にいたのに、
なんだか不思議な感じだった。
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その時。
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香葉の視線がダイニングテーブルへ向く。
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「あ。」
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テーブルの上。
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母からのメモ。
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その横に置かれたお弁当箱。
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そういえば。
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今朝。
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母が言っていた。
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『お昼用に作ったけど、体調悪そうだったら無理にはいいから。』
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、、、多分食べない、、、。
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香葉は立ち上がる。
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「古畑。」
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「ん?」
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「お弁当食べる?」
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一瞬の沈黙。
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そして。
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「へぇっ、、、」
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変な声が出た。
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本当に変な声だった。
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香葉が吹き出す。
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亮も自分で吹き出す。
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「笑笑笑」
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「笑笑笑」
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二人同時だった。
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「何今の声、、、笑笑」
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香葉はお腹を抱える。
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亮も笑いながら言う。
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「分かんない、、、笑笑」
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「へぇって何、、、笑笑」
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「俺も思った、、、笑」
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しばらく笑いが止まらない。
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ようやく落ち着いて、
亮が聞く。
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「え、でもいいの?」
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「食べないなら捨てる。」
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「もったいない。」
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「でしょ。」
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「食べる。」
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即答だった。
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香葉は呆れたように笑う。
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「遠慮しろ。」
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「無理。」
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「知ってた。」
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お弁当箱を開く。
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卵焼き。
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唐揚げ。
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ブロッコリー。
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ミニトマト。
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そして。
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綺麗に握られたおにぎり。
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亮が目を丸くする。
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「うまそう。」
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「まだ食べてない。」
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「見れば分かる。」
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「何それ。」
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亮は箸を受け取る。
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「いただきます。」
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そして唐揚げを一口。
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数秒。
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止まる。
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香葉が少し不安になる。
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「どうしたの。」
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亮はゆっくり顔を上げた。
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「うま。」
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「大袈裟。」
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「いや本当に。」
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もう一口。
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また一口。
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食べるペースが早い。
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香葉は笑う。
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「お腹空いてたんだ。」
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「めちゃくちゃ。」
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「さっき麦茶で満足してたじゃん。」
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「別腹。」
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「意味分かんない。」
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亮は幸せそうにおにぎりを頬張る。
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その様子を見ていると、
香葉まで少し嬉しくなる。
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母が聞いたら喜びそうだ。
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そんなことを思いながら、
香葉はソファにもたれた。
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気付けば。
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病院のことも。
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体調のことも。
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今だけは忘れていた。
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リビングには、
二人の笑い声だけが響いていた。




