リビング
リビング。
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香葉は亮をソファへ案内した。
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「適当に座って。」
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「おじゃまします。」
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亮は少しだけ緊張した様子で腰を下ろす。
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さっきまで普通に話していたのに、
人の家へ入ると急に大人しくなる。
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「何その顔。」
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「いや。」
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亮は辺りを見回した。
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「本当にすごい家だな。」
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「まだ言う。」
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「だって。」
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「慣れる。」
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「無理。」
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即答だった。
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香葉は呆れながらキッチンへ向かう。
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冷蔵庫を開ける。
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お茶。
ジュース。
炭酸。
ミネラルウォーター。
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一応聞くことにした。
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「古畑って何飲むの?」
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リビングから返事が来る。
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「なんでも。」
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香葉は吹き出した。
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「古畑っぽい。」
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「何それ。」
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「こだわり無さそう」
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「失礼だな。」
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亮の抗議が聞こえる。
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香葉は笑いながらグラスを取り出した。
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「だって本当に何でも飲みそう。」
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「飲む。」
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「ほら。」
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「褒めてる?」
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「別に。」
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いつもの返事。
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香葉は冷たい麦茶を注ぐ。
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氷を入れる。
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カラン、と音が鳴る。
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グラスを二つ持ってリビングへ戻る。
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「はい。」
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「ありがとう。」
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亮はグラスを受け取る。
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一口飲む。
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「うま。」
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「麦茶だよ。」
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「麦茶うま。」
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「小学生?」
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「否定できない。」
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香葉は思わず笑った。
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本当に変な人だ。
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学校にいる時とほとんど変わらない。
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気を遣わせないというか。
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遠慮がないというか。
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その時。
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亮の視線がリビングの棚へ向いた。
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飾られた写真。
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家族写真。
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幼い頃の香葉。
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七五三。
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入学式。
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父と母に挟まれて笑っている写真。
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亮は思わず近付いた。
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「え。」
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「何。」
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「これ浜中?」
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「見れば分かる。」
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「ちっちゃ。」
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「誰でも小さい時は小さい。」
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「確かに。」
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亮は笑う。
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そして。
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一枚の写真で足を止めた。
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小学生くらいの香葉。
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手には色鉛筆。
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机いっぱいに紙を広げている。
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「昔から描いてたんだ。」
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香葉の動きが少しだけ止まった。
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「……まあ。」
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「服?」
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「うん。」
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ほんの少しだけ。
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亮の目の色が変わった。
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興味を持った時の顔だった。
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香葉はまだ気付いていない。
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この数分後。
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亮が自分の部屋で、
もっと驚くことになるのを。




