家
住宅街を数分歩く。
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角を曲がったところで、
亮の足が止まった。
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「え。」
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香葉は振り返る。
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「何。」
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亮は目の前を指差した。
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「え。」
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もう一度。
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「何。」
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「いや。」
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亮は門を見る。
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庭を見る。
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建物を見る。
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そして。
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「浜中って実はお嬢様」
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香葉は思わず顔をしかめた。
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「んな訳ない……。」
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「いやいやいや。」
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「普通。」
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「絶対普通じゃない。」
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「普通。」
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「普通の家に門ない。」
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「ある。」
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「ない。」
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即答だった。
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香葉は諦めたようにため息をつく。
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「うるさい。」
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「すみません。」
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全然反省していない。
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亮はまだ家を見ている。
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なんだか少し恥ずかしくなってきた。
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別に自分が建てた訳じゃない。
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でも。
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今まで学校の友達を連れて来たことはほとんどない。
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だから妙に落ち着かない。
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香葉は玄関の鍵を開けた。
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「ただいま。」
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返事はない。
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母はまだ仕事だ。
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家には誰もいない。
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香葉は少し迷った。
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そして。
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「……。」
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亮を見る。
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亮もこちらを見る。
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数秒。
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妙な沈黙。
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「何。」
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「いや。」
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「何。」
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「別に。」
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香葉は少し視線を逸らした。
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そして小さく言った。
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「よかったら……。」
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「?」
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「お茶出すから……寄ってく?」
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言った瞬間。
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少し照れくさくなった。
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何だろう。
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別に変な意味じゃない。
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送ってもらったお礼だ。
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ただそれだけ。
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なのに。
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妙に恥ずかしい。
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亮は一瞬目を丸くした。
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そして。
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「いいの?」
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「聞いたの私。」
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「じゃあ行く。」
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即答。
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「早い。」
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「だってお茶。」
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「子供か。」
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亮は笑った。
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香葉も少し笑う。
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玄関へ入る。
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広い廊下。
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静かな家。
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亮は靴を脱ぎながら辺りを見回した。
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「すご……。」
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「うるさい。」
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「すご。」
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「うるさい。」
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「浜中。」
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「何。」
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「やっぱりお嬢様じゃん。」
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「違う。」
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「絶対違わない。」
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そんなやり取りをしながら、
二人はリビングへ向かった。
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そしてこの後。
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亮はまだ知らない。
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香葉の部屋で、
思いもよらないものを見ることになるのを。




