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一時間目
一時間目。
現代文。
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窓の外では蝉が鳴いていた。
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六月なのに。
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気が早すぎる。
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「じゃあ次、この部分読んでください。」
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先生が教科書を見渡す。
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嫌な予感。
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こういう時は当たる。
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「浜中。」
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「はい。」
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やっぱり。
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香葉は立ち上がる。
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教科書を開く。
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読み始める。
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教室は静かだった。
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読み終える。
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「はい、ありがとう。」
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着席。
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その瞬間。
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ぐらっ。
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一瞬だけ視界が揺れた。
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また。
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香葉は誰にも気付かれないように机へ手を置く。
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深呼吸。
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大丈夫。
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すぐ戻る。
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実際。
数秒で元に戻った。
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「……。」
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教科書へ視線を落とす。
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気のせい。
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そういうことにする。
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その頃。
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二列後ろ。
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亮はノートを取りながら眉をひそめていた。
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見えてしまった。
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ほんの一瞬。
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浜中がふらついたのを。
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「気のせいか?」
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小さく呟く。
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でも。
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ここ数日のことを思い出す。
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欠席。
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屋上での立ちくらみ。
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全部繋がる気がした。
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「古畑。」
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隣の男子が小声で言う。
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「何。」
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「先生見てる。」
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「あ。」
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慌ててノートへ視線を戻す。
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授業は続く。
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でも。
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亮は少しだけ落ち着かなかった。




