朝の教室
「今日も暑いね〜。」
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「六月なのに溶けちゃうね」
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朝の教室。
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エアコンは動いている。
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でも。
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生徒が三十人以上集まると意味がない。
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「マジで暑い。」
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「梅雨どこ行った。」
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「知らん。」
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朝から教室は騒がしい。
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いつもの光景。
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いつもの声。
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いつもの席。
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香葉は窓際の自分の席に座った。
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昨日より体調は悪くない。
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でも。
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絶好調でもない。
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なんとなく身体が重い。
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そんな感じ。
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「浜中おはよー。」
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「おはよ。」
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友達がやって来る。
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「昨日寝落ちした。」
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「毎日言ってる。」
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「昨日は本当に。」
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「毎日聞いてる。」
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友達が笑う。
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香葉も少し笑った。
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いつもの朝。
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変わらない教室。
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その時だった。
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ガラッ。
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教室のドアが開く。
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「暑っ。」
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聞き慣れた声。
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古畑亮だった。
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「おはよー。」
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クラスのあちこちから返事が飛ぶ。
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亮は自分の席へ向かう。
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途中。
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香葉の席の前で足を止めた。
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「浜中。」
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「何。」
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「生きてる?」
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「失礼。」
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即答。
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周囲から笑い声。
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「いや昨日顔色悪かったから。」
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「誰のせい。」
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「俺?」
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「知らない。」
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亮が笑う。
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相変わらずだった。
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「今日は?」
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「何が。」
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「大丈夫そう?」
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香葉は少しだけ考える。
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そして。
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「多分。」
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そう答えた。
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亮は頷く。
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「なら良かった。」
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それだけ。
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それだけ言うと自分の席へ向かった。
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香葉はその背中を見る。
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昔なら。
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お節介。
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そう思っていた。
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今も少し思う。
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でも。
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嫌ではなかった。
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窓の外では強い日差しが校庭を照らしている。
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六月。
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夏はすぐそこだった。
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そして教室は今日も騒がしい。
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いつも通り。
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だけど。
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香葉の中では少しずつ、
何かが変わり始めていた。




