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面会

母はスケッチブックを閉じると、ふと思い出したように言った。


「あっ、そうだった。」


「今日、北原先生から連絡があったの。」


「先生?」


香葉は少し首を傾げる。


「明日の面会時間に、お見舞いに来るって。」


「えっ……。」


思わず目を丸くする。


「忙しいのに……。」


「ちょうど学校も夏休みだから時間が取れたみたい。」


母は穏やかに微笑む。


「退院のお話もしたわよ。一度顔を見に来たいって。」


香葉は少し照れくさそうに笑った。


「先生らしいなぁ……。」


クラスでは少しおちゃらけることもある北原先生。


でも、生徒一人ひとりのことは誰よりも気に掛けてくれる。


そんな先生だからこそ、わざわざ病院まで来てくれるのだろう。


「古畑君も来るのかしら?」


母が何気なく尋ねる。


香葉は一瞬だけ考えて、小さく首を振った。


「……分かんない。」


そう答えたものの、心のどこかで少しだけ期待している自分がいた。


もし来たら、何て言おう。


“退院決まったよ。”


その一言を、一番に伝えたい相手が頭に浮かぶ。


香葉はその気持ちを胸の奥にしまい、窓の外へ視線を向けた。


明日は、少し賑やかな一日になりそうだった。

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