課題
病院に来てから、どれくらい経っただろう。
気付けば、二週間ほどが過ぎていた。
病院の生活にも少しずつ慣れてきた。
朝は採血や検温で目が覚める。
診察の日もあれば、検査の日もある。
点滴をしながら一日を過ごす日もあれば、特に予定もなく「今日は安静にしてくださいね」と言われる日もある。
窓から見える景色だけが、少しずつ夏らしく変わっていく。
蝉の鳴き声。
真っ青な空。
夕方には赤く染まる雲。
それを病室から眺める毎日だった。
ふと考える。
――みんな、今頃何してるんだろう。
出された課題。
学部決定試験の勉強。
友達との約束。
家族旅行。
きっと、それぞれが夏休みを楽しんでいる。
少しだけ羨ましい。
でも——。
自分の病気のことを考えれば、この時間も決して無駄ではない。
今まで見て見ぬふりをしてきた体と、ちゃんと向き合うための夏。
そう思えば、これも自分にとっては大切な夏休みなのかもしれない。
「……有意義、なのかな。」
思わず一人で苦笑する。
ベッド脇の机には、学校から出された夏休みの課題が積まれていた。
入院したその日から、「できる日は少しずつやろう」と決めていた。
午前中に少し。
午後に少し。
体調がいい日はもう少し。
無理はしない。
それだけを守って続けてきた。
気付けば、分厚かった課題の束も残りわずかになっていた。
「……終わっちゃいそう。」
自分でも少し驚く。
時間だけは、病院ではたくさんあった。
だから焦らず、一日ずつ進めてきた結果だった。
香葉は最後のページを閉じると、小さく伸びをした。
「これなら、学校が始まっても困らないかな。」
そう呟いたあと、ふっと笑う。
入院生活はまだ終わっていない。
それでも、課題が終わりに近づいていることが、小さな達成感になっていた。
病気と向き合いながら過ごした二週間。
何もしていないようで、少しずつ前には進めている。
そんな気がしていた。




