時間
夕方少し前。
病室の時計を見る。
診察の時間だった。
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コンコン。
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「浜中さん。」
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草川だった。
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「そろそろ行こうか。」
「はい。」
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香葉はゆっくりベッドから降りる。
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身体が重い。
疲れのせいなのか。
緊張のせいなのか。
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自分でも分からなかった。
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草川は歩く速度を少し落としてくれる。
病棟の廊下。
何度も歩いた道。
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なのに今日は妙に長く感じる。
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「……。」
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香葉は何も話さない。
草川も無理に話しかけない。
ただ隣を歩いている。
それだけだった。
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診察室前。
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そこには既に母がいた。
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「香葉。」
母が立ち上がる。
いつも通りの笑顔。
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でも少しだけ固い。
香葉にも分かった。
母も緊張している。
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草川は二人を見る。
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「じゃあ。」
軽く頭を下げる。
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「失礼します。」
「ありがとうございます。」
母も頭を下げる。
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草川は小さく笑った。
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「終わったら夕食だから。」
「食べてくださいね」
香葉
-_-
「努力します。」
「努力じゃなくて食べる。」
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最後にそう言い残して、
草川は病棟へ戻って行った。
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静かになる。
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診察室の前。
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母と二人。
閉じられたドア。
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中から聞こえる話し声。
診察はまだ終わっていないらしい。
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「……。」
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香葉は椅子へ座った。
手を握る。
冷たい。
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母はそんな香葉の手をそっと握った。
子供の頃みたいに。
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「大丈夫。」
母が言う。
香葉は小さく頷いた。
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でも。
本当は。
全然大丈夫じゃなかった。
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数分後。
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診察室のドアが開く。
「浜中さん。」
主治医の声だった。




