96/202
第95話:鉄格子の朝、あるいは沈黙の守護神
冷たい壁に囲まれた留置所の朝。
私は、婦警さんが用意してくれた地味な服に
袖を通し、硬い畳の上で膝を抱えていた。
あのピンク色のパイロットスーツは、
証拠品としてどこかへ持っていかれた。
バロとも、おじいちゃんとも、連絡する手段はない。
「……ガソタム、どうなっちゃったのかな」
パトカーで連行される際、車窓から見た光景。
巨大なブルーシートで覆い隠され、
運ばれていくガソタムの後ろ姿が最後だった。
今はどこかの施設で、大人たちに
分解されてしまっているのかもしれない。
そう思うと、胸が締め付けられるように痛かった。
連日続く、狭い部屋での厳しい取り調べ。
「誰に教わった?」「黒幕は誰だ?」
同じ質問が、何度も波のように押し寄せる。
「私は……正直に話しているのに」
今の私にできるのは、嘘をつかず、
おじいちゃんと歩んだあの夏の日々を、
ありのままに答えることだけだった。
けれど、真実を話せば話すほど、
刑事たちの顔は険しくなっていく。
街を救ったあの瞬間が、
遠い夢だったのではないかと思えるほどに、
私の世界は、狭く、暗い場所へ閉ざされていた。




