第88話:巨鯨を撃て、あるいは断ち切る足
荒れ狂う海面へと急降下し、私はタンカーの直上へ。
間近で見るその巨体は、まるで動く鉄の島のようだ。
『麗、焦るな! 相手は30万トン級の石油タンカーじゃ。
このまま正面から受け止めても、押し潰されるのがオチだ!』
おじいちゃんの緊迫した声が、コクピットに響く。
『まずは、こいつの推進力を奪わねばならん。
後ろへ回り込み、スクリューを徹底的に叩き壊すのじゃ!
頭部バルカン砲を使え!』
「わかった! 回り込むわよ、ガソタム!」
私は操縦桿を横に倒し、機体を鋭く旋回させた。
巻き上がる激しい飛沫を抜け、タンカーの真後ろへ。
海面の下で巨大なプロペラが、猛烈な勢いで回転している。
「 頭部バルカン、起動!」
照準を一点に絞り、私は発射ボタンを強く押し込んだ。
ガソタムの頭部から火線が走り、水中へ突き刺さる。
激しい衝撃音と、鋼鉄を噛み砕く鈍い音が海に響く。
強固なスクリューの刃が粉々に砕け、弾け飛び、
無残な金属片となって暗い海中へと沈んでいった。
『よし! 異音を検知。動力伝達系が完全に沈黙したぞ!』
プロペラの回転が止まり、海を裂く航跡が弱まった。
だが、30万トンの慣性は、まだ容赦なく港へ向かっている。
「……足は止めたわ。でも、まだ進んでる!」
私は操縦桿を握り直し、次なる決戦のため、
再びタンカーの正面へと機体を急加速させた。




