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第86話:天空の咆哮、あるいは三分間の奇跡
訓練の時とは比較にならない、凄まじいGが私を襲う。
肺から空気が絞り出され、視界が急激に暗くなっていく。
意識が遠のき、指先から力が抜けそうになるのを、
私は舌を強く噛み切るような思いで必死に踏み止まった。
「……ここで、寝るわけには……いかないのよ!」
ガソタムは夕闇を切り裂き、天を突くように舞い上がる。
眼下の街が、瞬く間に点となって遠ざかり、
世界が歪むほどの神速が、私を雲の上の高みへと連れ去る。
『麗、しっかりしろ! これぐらいでへたばるんじゃない!
タンカーの衝突まで、残りはもう10分を切ったぞ!』
おじいちゃんの怒号が、朦朧とする意識を叩き起こす。
モニターには、港へ突き進む「移動爆弾」が不気味に映る。
『今の高度と速度なら、現場まで5分……いや、
わしの計算が正しければ、3分以内に辿り着ける!』
「……3分ね。わかった、やってやるわよ! おじいちゃん!」
私は歯を食いしばり、重圧で軋む体に鞭を打って、
港へ向けて大きく操縦桿を倒し、機体を急降下させた。
空に描かれるのは、一筋の蒼い閃光。
逃げ惑う人々が、希望のようにその光を見上げる中、
私たちは、破滅へと続く運命の海へと真っ逆さまに落ちていく。




