第8話:市役所の宣告と、響く喧騒
私は居ても立ってもいられず、市役所の都市計画課へ向かった。
カウンターで再開発の詳しい図面を見せてもらう。
震える指先で、自分の家の所在地を確認した。
……だめだ、これは本格的にやばい。
新しい地下路線の補強壁が、私の家の地下室と干渉している。
調査が始まれば、あの巨大な空洞は確実に見つかるだろう。
十八トンの鉄塊が、公的機関に『発掘』される日も近い。
「……どうしよう。本当に、どうすればいいの」
目の前が真っ暗になり、膝の力が抜けそうになった。
脱税、違法建築、そして正体不明の巨大ロボット。
私の人生が、音を立てて崩れていく予感。
その時だった。
市役所の外から、何やら騒がしい声が聞こえてきた。
「……なんだ? デモか何かか?」
窓口の職員さんも、怪訝そうな顔で外を覗き込む。
何人もの怒鳴り声と、それを制止する警察官の笛の音。
ざわつきは、どんどん大きくなっていく。
私は重い足取りで、自動ドアから外へ出た。
広場には、横断幕を掲げた集団と、パトカーが数台。
「再開発反対! 先祖代々の土地を守れ!」
……反対運動。
普通の女子高生なら、怖くて近寄らないような光景だ。
けれど、絶望の淵にいた私の耳に、その言葉は甘く響いた。
「……守れるの? 反対すれば、あそこを掘られずに済むの?」
私は吸い寄せられるように、騒ぎの中心へと歩き出した。
私の家の地下に眠る『ガソタム』。
それを守るためなら、私は悪魔にだって魂を売る。




