第78話:白金の守護、あるいは秘密の回線
帰り際、九条さんは玄関先で私の手に小さな
包みを握らせた。
開けてみると、そこには白銀の台座に
小さな宝石を嵌め込んだ、
一見すると上品なペンダントにしか見えない、
精密な機械があった。
「これ、通信機なの。何か困ったことがあったら、
これで私に連絡して。
既存のインフラが止まっても、これなら確実に私と
繋がるようになっているわ」
おじいちゃんの研究仲間が、
独自に作り上げた「保険」。
私は、その金属の冷たさに九条さんの覚悟を感じて、
深く頷いた。
「ありがとうございます……。大事に持っています」
「ふふ、似合うわよ。……それじゃあね、
源造さんの小さなお姫様」
九条さんは軽やかな足取りで去っていった。
その背中が見えなくなるまで
見送り、ドアを閉めた瞬間、部屋の隅で
バロのレンズが静かに光った。
『レイ様。その端末、解析の結果、
九条様が独自に構築した専用回線を
使用していますね。……贅沢な「お守り」を
貰ったものです』
「……。バロ、あんたも九条さんのこと、
本当は信頼してるんでしょ?」
私が尋ねると、バロは一瞬だけ沈黙し、
いつもの執事の声で答えた。
『肯定します。……彼女は、源造様が唯一、
知恵を出し合った対等な
パートナーですから。彼女の技術があれば、
私のバックアップも可能でしょう』
私は胸元で揺れるペンダントを握りしめ、
得体の知れない不安の中に、
小さな、けれど確かな「味方」ができたことに、
心から安堵していた。




