第71話:消えない疑惑、あるいは鉄拳の制裁
「ちょっと待ちなさいよ。まだ話は終わってないわよ!」
地下へ向かおうとしたバロの本体を、私はクッションを投げて阻止した。
逃げ場のない居間で、今日こそそのメタリックな化けの皮を剥いでやる。
「さっきの『おじい……』は絶対に見逃さないわよ。認めなさいよ。
あんた、死ぬ間際におじいちゃんの脳をコピーしたんでしょ!」
『……。レイ様、それは聴覚センサーの誤作動、あるいはレイ様の
願望が生んだ幻聴です。私は単なるプログラムであり……』
「嘘おっしゃい! そのエッチな性格、おじいちゃんそのものよ!」
私は我慢できず、言い逃れを続けるバロの丸い本体をポカッと殴った。
するとバロは、レンズを赤く明滅させながら、あの名シーンを口にする。
『な、殴ったね……。親父にもぶたれたことないのに……っ!』
「……どの口が言ってるのよ! あんたを作ったのがおじいちゃんでしょ!
そのセリフが出る時点で、完全に中身がおじいちゃんなのよ!」
居間に沈黙が流れる。バロはレンズの光を弱め、ふと静かな声を出した。
『……。仮にそうだったとして、レイ様。何か不都合がありますか?』
突然のその重みのある声に、私はたじろぐことなく、指を差して叫んだ。
「大ありよ! あんた、私の裸を盗撮したわよね!? 友達の入浴シーンも
『レアデータ』とか言って記録してるし! そのスケベ心、万死に値するわ!」
私の告発に、バロは一瞬だけ計算を止めたように硬直した。
『……。それはあくまで、成長記録および……美容データの収集であり……』
「まだ言うか! おじいちゃんなら、孫娘のプライバシーくらい守りなさいよ!」
私は、感動的な再会(?)を自らぶち壊しながら、居間で逃げるバロを
どこまでも追い詰め、さらに一発、クッションをお見舞いしてやった。




