第66話:古き戦友、あるいは語られざる弔い
「驚いたわ……。あんなに小さかった麗さんが、こんなに大きくなって」
女性は潤んだ瞳で私を見つめ、懐かしむように小さく息をついた。
「私は九条エマ。昔、古谷源造さんと共に研究をしていた
仕事仲間なの。……麗さん、私のことは覚えていないかしら?」
九条さんと名乗った彼女は、私の手を優しく包み込み、居間のソファへと
案内してくれた。サキとチカも、話の大きさに息を呑んで見守っている。
「源造さんが亡くなった時は、もちろんお葬式には伺ったわ。でも、
あの日、ご親族の席にいた麗さんはずっと俯いていたし……。
参列者が多すぎて、声をかけることもできず、そのまま失礼したの」
おじいちゃんの葬儀。確かにあの日は、黒い服を着た大勢の大人たちが
詰めかけていた。その中に、この九条さんもいたということか。
「九条さん……おじいちゃんと、どんな研究をしていたんですか?」
私が尋ねると、彼女は壁に投影された複雑な回路図を愛おしげに眺めた。
「平和のための技術よ。……もっとも、彼は少し心配性が過ぎて、
時々私にも理解できないほど過剰な防衛システムを作っていたけれど」
九条さんの言葉に、私は思わず足元のバッグに視線を落とした。
その「過剰な防衛システム」の塊であるバロは、今も頑なに沈黙を守り、
まるで自分の存在を、かつての主人の戦友から隠しているかのようだった。
おじいちゃんの知られざる一面。そして、この家を埋め尽くす超技術。
点と点が繋がり始めた夜、私は知る。おじいちゃんの遺産は、
私が思うよりもずっと広く、深く、この世界に根を張っていたのだ。




