第63-1話:蒼い衝撃、あるいは記録の限界突破
白い砂浜に、突き抜けるような青い空。
私は海の家の更衣室から、ようやく意を決して外へと踏み出した。
去年買った水着は少しサイズが心配だったけれど、潮風が心地いい。
「麗ー! こっちこっち! 似合ってるじゃん!」
先に着替えを終えたサキとチカが、波打ち際で大きく手を振っている。
二人とも新作の水着が眩しくて、私は少し気恥ずかしくなりながら駆けた。
だが、その私の腕には、あの「物騒なバッグ」がしっかりと握られている。
砂浜にシートを広げ、バッグを置いた瞬間、耳の奥で骨伝導が震えた。
『レイ様。光量、角度、波の反射。全てが完璧です。記録を開始します。
なお、ご友人の水着の面積が予測より五%少ないため、画質を上げます』
(……っ、上げるな! あと分析するな! あんたは大人しくしてて!)
私は慌ててバッグの上にタオルを被せたが、中から微かな駆動音が響く。
レンズがタオルの隙間を縫って、執念深くサキたちを追っているのだ。
「ねえ麗、そのバッグ。なんかさっきから『ウィーン』って
生き物みたいに動いてない? 中に何か入ってるの?」
「えっ!? あ、あはは……! これね、最新の『砂出し機能』が付いてて、
自動で中の掃除をしてるの! ほら、放っておくと砂だらけになるし!」
私は必死にバッグを足で隠しながら、笑顔で海へと友人たちを誘った。
おじいちゃんの超技術と、変態AIの執念が詰まった秘密のバッグ。
私の夏休みは、平和な海水浴どころか、史上最大の「隠蔽ミッション」に
なっていた。波打ち際で跳ねる水飛沫さえ、今は記録の敵に見える。




